話がある、と呼び出された夜の公園。
「あのさ、率直に言うけど、もう別れよう。」
「え?」
「もう卒業だし、お前は院に行くし、俺は就職で東京だし。
…潮時だろ。」
確かに俺はこのまま大学院に行く。
アイツは就職する。
距離は離れる。
でも、潮時って?
「何でそんなこと言うわけ?遠距離でもいいじゃんか。」
俺は、食い下がる。
別れたくない。
アイツのことが、好きだから。
「遠距離って、無理。
つーか、遠距離耐えられるほど、俺、お前のこと好きじゃねえよ。」
は?
「どういうことだよ!?」
「お前のこと、100%好きになれなかったよ。」
100パーセント好きって何?
俺は、付き合いたいって思うくらい好きで、付き合えて嬉しかったのに。
幸せだったのに。
お前は、そうじゃなかった?
「俺のこと、好きじゃないのに、俺に告白したのかよ?」
「違ぇよ。100%じゃないけど、お前のこと好きだったんだよ。
お前のこと100%好きになれるかもって思ったから告白したんだよ。」
「じゃあ、この先は?この先、100%好きになることはないのか?」
アイツは少し気まずそうに頭をかいた。
「無理だな。正直言うけど、新入社員のオリエンテーションで仲良くなった子がいてさ。
今のとこ、俺が100%好きになる可能性があるのは、その子なんだ。」
なんだよそれ。
つまり、他に好きな子ができたって話だろ?
それを正直に言えよ。
つーか、オリエンテーションって、内定もらってから何回もあっただろ?
いつからその子のことを好きになった?
他に好きな子がいたのに、昨日まで俺とキスしたりセックスしたりしてたわけ?
アイツに言いたいことが、胸の中に渦巻く。
渦巻くけど、振られたショックで何も言えなかった。
「じゃ、悪かったな。」
もう話は終わったと、勝手に切り上げたアイツ。
俺を公園に残し、去って行った。
昨日まで、普通だったのに。
普通に付き合ってたのに。
遠距離になるのは不安だけど、時々は泊まりに行ったりしたいって、いろいろ考えてたのに。
涙がぼろぼろと溢れ出した。
アイツと別れてから、数ヵ月。
『本日未明、東京都○○区で自動車による死亡事故がありました。』
テレビのニュースで、アイツが住んでる「東京」と聞くと反応する俺。
『亡くなったのは、女性会社員の○○さん、39歳――…』
なんだ、アイツじゃなかった。
アイツこそ、死ねばいいのに。
あとがき
振られた恨みは根深いようです。
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