婚活が失敗した話・後編

A氏に対しいろいろ違和感を抱くようになったが、奈良公園に行ったときはA氏の良い面も見えた。
2月時点で私は仕事を辞めようかと決断しつつあり、それをA氏にも伝えた。
婚活相手(私)が無職になるのは、A氏にとっても他人事ではないと思ったから。
A氏は「資格を取る勉強をしてもいいかもしれないですね」など、親身に話を聞いてくれた。

と、良い面もあったけど、でもやっぱり各種違和感のほうが大きすぎて多すぎて、しばらくこちらから連絡しなかった。
A氏からも連絡もなく、なんとなく日々は過ぎて行った。


そして3月。なんやかんやで食事に行くことになった。
奈良公園事件のことは少し忘れ、やっぱり最初に会ったときは気が合ったんだし、と気持ちを切り替えた。
A氏の職場近くの駅で待ち合わせした。私はそこに土地勘がなかったので、A氏にお店選びを任せた。

待ち合わせしてすぐにお店に行くかと思いきや、A氏は街をさまよった。

どっか知ってる店を予約しとけよ…と思ったけど何も言えなかった。
結局、某有名焼き鳥チェーン店に入った。それはいい。私は焼き鳥が好きだ。

A氏は焦げが嫌いなようで、焼き鳥の焦げの部分をこそいでた。

私からすると、ほんのちょっとの焦げ。食べたら少しは苦いかもしれない。でも、こそぐほどじゃない。その程度でこそごうとも思わない。

焼き鳥の焦げの部分をこそぐA氏を目前に、私は焦げを気にせず焼き鳥を食べた。

帰り際、バレンタインのお返しということでお菓子を貰った。
お返しをする、その気遣いはできる人。
でもあんなちょっとの焦げを取ろうとするのがなあ…とハッキリすっきりしない気持ちで家路についた。


3月の半ば、仲人さんから連絡があった。
「向こうの仲人さんによるとAさんは結婚に前向きだそうです。のずさんはどうですか?」と。
なんだかんだで9月に知り合ってから3月まで連絡を取りあって、出掛けている。
いろいろと違和感もあるけど、でも絶対無理!イヤ!というほどでもない。
何より向こうが乗り気なら、それは喜ばしいこと。

だから私は仲人さんに返事した。
「私も結婚に前向きです」と。

「では今日からプロポーズ待ち期間です。一か月以内にプロポーズされると思うので!」と仲人さんは嬉しそうに言った。私もなんだかドキドキしてきた。


4月初め、お花見に行くことになった。
仲人さんの話もあったし、もしかしたら今日プロポーズされるかもしれないなと緊張した。
プロポーズされたら親への挨拶とかいろいろ忙しいんだろうなと想像した。

お花見当日。しっかりした雨が降っていた。
雨だったが花見客は多く、傘を差しながらウロウロした。ベンチに座ったりもできず、落ち着かないお花見だった。
お昼にお店に入るのも並んで疲れた。

そしてその日、プロポーズは無かった。私は首をひねった。

それから連絡を取り合うことはあっても、プロポーズの話は出てこないまま仲人さんの言った一か月が過ぎた。一か月以上が過ぎた。

どうなってるんだと仲人さんに聞いてみた。
「え?プロポーズまだなんですか?Aさんの仲人さんに連絡とってみます」という返事だったので、しばらく待つことにした。
だが、その連絡が来る前に、A氏と食事に行くことになった。

今度は私が予約を取った。個室のイタリアンレストラン。

ピザを頼んだ。お店の窯で焼いたピザ。
A氏はまた焦げの部分を取ってた。そして箸でピザを食べた。
なんで箸でピザ食べるんや…と、心の中でツッコミ入れた。私は手で食べた。

「ピザ一枚だと同じ味たくさん食べなきゃいけないので飽きますね。○○(ピザのバイキングの店)だったら一切れずついろんな味を楽しめるけど」

まじでなんやコイツと思った。私が予約した店にケチをつける。しかも○○って高校生や大学生が行くような店やん。もしくは子どもがいるファミリーで行くような店やん。

私は奈良公園事件よりもテンションがだだ下がりした。

A氏が飲み物を最後までずごごーっとストローで吸ってるのも嫌だった。
私的には残った飲み物(溶けた氷)をずごごーっってするのはマナー違反なので、ずごごーってされるのが嫌だった。

メニューにミックスナッツがあった。それを見たA氏が「家にあるナッツを持ってこればよかった」と言った。冗談かもしれないけど、セコいなと思った。

そして当たり障りのない話をした。今の状況や、今度またどこか遊びに行きましょう、など。
「シフトを確認してこればよかった。シフト確認してまた連絡しますね」とA氏は言った。
この日もプロポーズは無かった。

テンションはだだ下がりしたけど、また遊びに行く約束をした。
そのころには仲人さんからも連絡来るよな…と。

ピザ事件の翌日、タイミングがいいのか悪いのか仲人さんから連絡があった。
曰く。
「Aさんは結婚したいと思ってるけど、のずさんのほうから結婚の話を切り出してほしいそうです。普通は男性のほうから、なんですけど」
とのこと。

………。私は呆れた。意思表示できないA氏に呆れた。

「少し考えを整理させてください」と仲人さんに伝えた。

ピザ事件の日に「また出掛けましょう」という話をして、「シフトを確認して連絡します」とA氏は言った。
その出かける日に、話を切り出してみようと思った。結婚についてどう思ってますか?と。

しかし、それから二週間。連絡がない。シフトを確認して連絡するのは、当日か翌日にはできると思うのに、二週間連絡がない。


私は考えを整理し終わった。仲人さんに連絡した。

「Aさんとの交際は終了でお願いします」

と。


分かってる。「シフト確認できました?」と、私から連絡すればいい話。
でも面倒に思った。

違和感を抱いたとき、明るく軽くツッコミ入れればよかった。
「毘沙門天ですって。マンガで読んだんです」とか。
「焦げてるのイヤなんですか?」とか。
「なんでお箸でピザ食べるんですか?」とか。
「○○は私たちが行くには子どもっぽいですよ」とか。

心の中でねちねちを醸成せずに、言葉を選んで言えばよかった。


次、また交際に至ることがあれば、今度は思ってることを伝えたほうがいいな…。
そんな婚活失敗談でした。


改めて読み返すと、私の性格がよくない(;´・ω・)ネチネチ醸成はアカン…!




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