▼アンデルセン



「良いかマスター、この際ハッキリと伝えてやろう」

「ちょ、キャスター喋っちゃ駄目だよ!痛いんだろ!?」

「そうだとも!口を開く度裂けるような痛みが走り、歩みを進めればまた痛みが浸透する!だが、それがどうした?たかがそれだけのデメリットを恐れて俺に筆を折れと言うのかマスター!」

「意思疎通ならスマホがあるじゃんか、ほらっ!」

『口頭で述べた方がよっぽど早い』

「とか言いながら現代人の俺より圧倒的に使いこなしてる」

「俺の口の動きを停止させたいというのならば、アロンアルファでも持ってくるか熱で溶接させでもするんだな!戦士のように屈強な躰に非ず寧ろ其とは正反対に儚く小さく映る子供の俺に、さあやってみろ!」

「キャスターの底意地が悪すぎる……」

「戦士の武器は物理的な刃だが俺の武器はこの回る口と白い紙、インク、そしてペンだ。貴様が俺に向ける優しさは迂遠的で甘ったるい四肢切断に過ぎん」

「そ、そんなことは、」

「無いと言い切れるか?ならばマスター、貴様は真の阿呆だ。相手を思い遣る気持ちは美徳だが要所を誤れば悪質な嫌がらせになるぞ。善意の押し売りほど厄介なものはない!」

「……」

「フン……額縁通り受け取ってしょげるか。マスター、貴様の短絡な慈しみは俺の喉をコットンで窒息させるが、他人に一言二言口を挟まれて呆気なく行為を止める事こそが愚蒙であると理解しろ。指図されて諦めるならば最初からやるなという話だ」

(一言でも二言でもないけど)
「……慰めてくれてありがとう、キャスター」

「俺が何時慰めた」

「もうちょっとキャスターに迷惑をかけないですむ方法、考えてみるね」

「徒労になるだろうと分かっていて突き進むのかマスター」

「ああ。だって、そうした方が俺らしいだろ?」

「フン、まあな」



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