▼スクアーロ



「××」

「どうしたぁ゛」


わざわざこちらを向く君を見るたびに得も言われぬ優越感を感じる。
「何でもない」と答えてみれば、君は怒りもしないで微笑む。
君のこんな姿は誰も知らないだろう。あのXANXUSも知らないだろう。
君がXANXUSに全てを奉げているのに間違いはないが、君のその顔を、感情を、変化を生み出せるのは僕だけなのだから。
改めて再認識を完了させれば花が綻ぶような笑顔が浮かぶ。
何故再認識をする必要があるのかって、それはもちろん、特別扱いをされていると感じたいだけなのであった。


「××、愛してる」

「今日はやけに積極的だな。オレも愛してるぜぇ」


周囲が呼ぶ君の名はスペルビ・スクアーロ。傲慢な鮫。名前にしても苗字にしても可笑しいと思うのは至って普通のことだ。
だって偽名だし。
スクアーロの本当の名前を知るのは僕だけ。
××の両親はもう死んだ。というか僕が殺した。兄弟や親戚はいない。近所の連中も殺した。
生まれ育った町から出て行って、移り住んだ新しい土地で名乗りだした名前がスペルビ・スクアーロ。
だから『××』を知るのは正真正銘僕だけなのだ。


「僕、死ぬなら死因は××がいいな」

「ククッ……そりゃあ良いが、オレの死因はどうすんだ」

「あっそうか。んー心中で一緒に死ぬとか?」

「ならそれに決まりだぁ。もしつまんねえ任務なんかで死んだりなんかしたら殺すぞ、いいな」


なにそれ、嬉しい殺し文句だね。



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