▼銀時



「もしもさ」


テレビを見ながらゆったりだらだら。
日常会話の延長線上で、ポテチを齧りながらなんとなく聞いてみた。


「銀時が記憶無くすまで酔いつぶれて」

「よくある事だな」

「そういやそうだな」

「んで?」


そういえばよくある事だったな、と同意して、ちょっと不安になった。
俺が聞こうとしてることに関係があったからである。


「目が覚めたら、横で知らない女が裸で寝てたらどうする?」


うーんうーんとちょっとの間悩み、怪訝そうに視線を送ってくる銀時をこれ以上待たせるわけにはいかず結局話す。
銀時は苺牛乳のラッパ飲みを止めて首を傾げた。


「浮気するしないの問題じゃなくてか?」

「ああ。やった前提で」

「あー……」


銀時は性に奔放って程ではないが、興味がない訳でもない。飯も女も睡眠もどれもこれもくれるというならおっしゃ寄越せと豪語する強欲さである。
付き合いだしたと同時に始めた万事屋もだいぶ軌道に乗ってきたところで、疑問に思ったのである。一時的な気の迷いだったってことで女に戻ったりすんのかなーと。銀時ってばちゃらんぽらんだから離れる時はパッとあっという間に居なくなるだろうし、覚悟はしておきたい。


「バラしてトイレに流すな」


えっ。


「……女を?」

「女を」

「マジか」

「マジだ」


聞き間違いかと思ったが、銀時の顔はマジだった。というか無表情だった。


「でもさ、警察が家宅捜索したら髪の毛とか指紋とかで犯行バレるかもよ」

「そうか?」

「そうだよ」

「どうしようもなくなったらお前連れて逃げる」

「お登勢さんを置いてかよ」

「どうしようもなくなったらっつったろうがよ」


大マジ顔だった。


「そこまで行ったら最優先するのはお前だけだ。それとも何か?浮気した俺とは一緒にいたくねえってか」

「いや……うーん、いや、まあ浮気は嫌だけどさ」


でも、当の女をトイレに流すんだろ?
なら何処にでもついていく。



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