超能力者特有のエネルギー反応。隣にいる総理まで巻き込む程の大きな力が勢いをもって私に襲い掛かる。
ちかり。
閉じた瞼越しに、色を捉えた。
「報道を見て飛んできたら……たまたま公園に気配を見つけた」
視力を欠如して生まれた。その代わり、周囲の動きの先を読むことができた。
景色を見れないことを悲観したことは一度もない。綺麗な風景があると言われても、見たいと強く思ったことはない。
私の視界は他の者たちの言葉を借りれば黒一色。一般的に考えればつまらないのだろうが、超能力によって様々な種類のエネルギーを感じ取ることができる為健全者よりも視れる種類は豊富だろう。
つまり、何が言いたいのかというとだ。
不満はないのだ。五感のうち一つが存在しないことぐらい問題ない。その程度のものである。
だが、それでも。
もしこの先何らかの形で、景色を見る機会が出来たとしたら。
「人生が思い通りに運ぶと思ってるなら」
超能力を使わずに視れるとして。
この世界の色が見えた場合、私ははたしてどう感じるのだろうか。
そんな考えが頭のどこかにずっとこびり付いていた。
「僕に負けて勉強するといいよ」
随分と傲慢な物言いだ。だが立ちふさがる超能力者を井戸の中の蛙と評するにも感じ取れるエネルギー量は多大。十中八九ナチュラルだろう。
爆発させる力、鞭のようにしならせ動かす力、燃やす力、バリアを複数展開できる力。
ちかちか。
閉じた瞼越しに、多様な色を持つ相手を視た。
(ああ、そういうことか)
「キミは多彩だな」
納得した。なるほど、これは仕方がない。
これと同じものを健全者はいつも見ているとでも言うのなら、両手をあげて参りましたと降参しよう。
これが色だというのなら、五感満足の人々が私を哀れむのも納得がいく。いっそ悔しいくらいにすとんと納得してしまった。
(彼は本当に綺麗だ)
色とりどりで美しいこの超能力者をまた見てみたい。そう思いながら一撃を与え彼の意識を刈り取った。
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