成り代わり | ナノ


ドイツと友達になれと上司に言われたが、案の定無理だった。
無理だろ、分かるだろそれぐらい。友達になってくれのとの字を言うまでもなく分かったぞ。
……やはりこのご時勢に一人は辛い。一人では絶対にやっていけないと肌で感じる。
どうにかしないと、と色々考え地図と睨めっこしている時、とある国が目に映った。東洋に浮かぶ島国。


「日本か」


西洋に浮かぶ島国だからどことなく仲間意識がある。それに、島国で尚且つ世界に影響を与える力を持っている国というのは殆ど存在しない。以前誘ったドイツと比べると見劣りこそすれ、これから先成長していくのが予想できる。
それに、日本。日本という単語を聞いていると、不思議と胸が高鳴った。
悩んだが、結局、直接会って話してみる事にした。


「あの……貴方はもしや、イギリスさんですか……?」


愕然となった。この男を、いやこの人を見た瞬間、雷にうたれたかのような衝撃に全身が襲われたのである。
彼が玄関を開け俺と目が合った時、非常に激しい頭痛と共に異様な懐かしさが心に生まれた。
生まれた時から、生まれる前から、ずっと傍にいてくれたような。
とても大きくて安心できる、自分を見守っていてくれる存在。
頭痛が収まり、不安気な顔をした彼が俺を見上げている事に気付いた。


「――お前と友達になりたい、話だけでも聞いてくれ」


気付いた時にはするりと口からそんな台詞を吐きだしていた。
普段の俺ならば決して言わないであろう下側からの態度への驚きと、そして咄嗟に体面だけは取り繕えたことによる自分への自画自賛で満たされて混乱している中、彼は頷いて家へ招き入れてくれた。
そして、俺達は友達になる事が出来たのだ。
本当に嬉しかった。彼が俺の所に押しかけてきてまでも友好関係を結びたいと言われた時なんかは、天に召されるなら絶対に今だと確信したくらいだ。召されなかったが。


「勘違いするなよ。俺の為に同盟を組むだけであって、お前の為を思って組むんじゃないからな」

「そうですか」


微笑ましそうに笑われた。……可愛い。この世界で生きてきて、ずっと欧州の連中共の憎たらしい顔面を眺め殴り合いをしてきたからか、童顔で若々しい日本がとても可愛く見える。
俺よりも遥かに年上であるとかつての記憶が甦った今の俺はしっかりと把握しているというのに。した上で、凄く可愛い。
……まあ、些細な事だ。体格差とか身長差とかあるから、その所為だろう。


「おいおいイギリス、日本と一緒に何やってんだよ」


黒い軍服を着た日本は格好良い。やだ、俺の(元)祖国美しすぎ……と口元を覆ってしまう。格好よさの中に普段の可愛さも見え隠れするのだから最高だ。
バレないようにちらちら盗み見ていると、フランスが声をかけてきた。
何時も俺の邪魔をしてくるが今回もかよとイラッとくる。


「こう言っちゃなんだが隣に立たせる相手は選んだ方が良いぜ」


うるせえ!どうせ俺は金色毛虫だよ!!と日本の前で叫びかけるのを堪えた。
前の俺と今の俺がごっちゃごちゃになって以前の俺と大分変わったと自覚はあるものの相変わらずフランスに対しては喧嘩腰になってしまう。
落ち着け。日本のように落ち着いた物腰の相手と見た目だけ派手派手しい俺が隣同士、成程確かに明らかに浮いているだろう。だが!俺はそれでも日本が許す限り、そして上司が許す限り日本と共にいたい。
深呼吸をしてから、気まずそうな雰囲気を醸し出して俯いている日本の肩を掴み引き寄せた。


「なんだ、俺とこいつが一緒にいちゃ可笑しいか?俺の相棒にちょっとでも手を出してみろ、また百年ぶん殴ってやるからな」

「イ……イギリスさん」

「え、ええ?お前なにいっちゃってんの?正気?」


ぼすぼすと頭を突いてくるフランスの脇腹をド突く。


「いいか、勘違いすんなよ。俺が一緒にいたいからいるだけであって日本の意志は一切入ってないぞ!」


目を瞠って信じられないように俺を見つめるフランスを尻目に、日本が顔を真っ赤にさせて「わ、私がイギリスさんと一緒にいるのは私自身の意志です」と言ってきたので天に召されるかと思った。



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