成り代わり | ナノ


現代に伝わっている伝承と実際にあった真実が異なるというのはよくある事だと、カルデアでの生活で身に染みていた。
性格が違えば性別も違う。仲が良いと伝えられていたが、実際はちょっと難しい関係だった。その逆もある。


「私は騎士に成り損ねたただの戦士、国を滅ぼした反逆者ですが……マスター、貴女に剣と名誉を預け、命を捧げる事をここに誓います」


太陽に反射して映える金の髪と小さい頃に近所で遊んだ綺麗な草原を思い出す緑の目。
冬木で対峙した騎士王とそっくりの風貌で、彼女もまた伝承と真実が大いに違っている人達の一人だった。


「マシュはマスターを護る誇り高き盾です。ならば不肖ナナシ、誠心誠意マスターの剣としてマスターを脅かす物全てを斬り捨てましょう」

「うん……これからもよろしくね、ナナシ!」


彼女は普段は無表情だけど、何かと関わると途端に表情が豊かになる。鎧で顔を覆っているのはそれを自覚してて隠す為らしい。
花を見つけたりご飯が美味しかったりフォウくんと遊んだり、些細なことで笑顔を浮かべた。
それを見る度、何故か胸の奥がぎゅうっと縮むような、捕まれるような、でも不愉快ではないそんな気持ちでいっぱいになるのだ。


「おはようございます、マスター。今日も素敵な日になりますように」


ナナシの顔を朝一番で見れたから、もうとっくになってるよ、なんて本人に言えたらどんなにいいか!



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