成り代わり | ナノ


生まれた瞬間から全てに恵まれていただろうに、その目の奥には絶望があった。
貧民街の連中が持つものとはまた別の絶望である事は一目見れば分かる。

俺を養子として迎え血の繋がらない父親となったあの男は気付いていないようだったが、俺には分かった。
そう、あのエリナ・ペンドルトンも。スピードワゴンとかいう雑魚も。気付いていないだろう。俺だけだ、俺だけが奴の抱える闇に気付いたのだ。
呑気そうな笑顔を浮かべ世界に存在するどんな相手とも友好関係を築けるとも言いたげなお人よしな性格の裏に隠れた、諦めきったあの感情に!


「ジョジョ……」


最初はこのような行為に及ぶつもりなど無かった。友だと宣う癖に友が隠し持つ感情を察せられない雑魚、将来を誓い合った仲の癖に夫が隠し持つ性質を見逃した女、俺とあの男のように血の繋がった親子であろうに相手が陰で考えている事に気付かなかった養父。ジョジョに近しい者はそれなりに居た。どんな奴も気付かなかった。それにこのディオだけが気付いたのだという優越感だけがあった。

それだけだった。

だが、それが今ではどうだ。月日によって熟されていくワインのように、俺のジョジョに対する感情はどんどん変化していく。
ジョジョの身体を奪い身体の大半は俺の物になった。ジョジョの白骨化した頭は地上に舞い戻った直後に保存した。友人のように、時計のように、父のように、全て。全てだ、ジョジョの全てを俺は手に入れた。

唯一敬意を抱く相手だった。

ジョジョの頭蓋骨を眺めつづける内に、俺は何時の頃からか生きて動くジョジョをまた見たいと思うようになったのだ。
生きていられると邪魔だから排除したというのに。
今までの俺の行動と相反する感情にちょっとばかし戸惑ったが、どうせ直ぐ忘れるだろうと放置した。

しかし、そんな俺の考えとは裏腹にジョジョを思う時間が段々と増えていき、カス共の手によって俺とジョジョが引き上げられ久方ぶりの地上に舞い戻った時には死者蘇生に手を染めるまでに至ってしまう。
既に己を止めるリミッターは消え去っていて、寧ろジョジョを生き返らそうと一直線に行動するのに一種の爽快感さえ覚えた。


「早く目覚めろ、ジョジョ。このディオが呼んでいるんだぞ、不敬者め」


ヴァニラ・アイスを含めた全員を追い払い、正真正銘俺とジョジョだけの二人きり。
ジョジョの為に用意した生前の奴に似た体格をジョジョの頭にくっつけ、そして俺の隣で寝かせる。
蘇生方法は間違っていない。何時か必ず、ジョジョは甦る。

貴様が俺に歯向かうのは百年前からよおく分かっているからな。すんなり事が上手く運ぶなど思っていない。
鬱陶しく面倒で、俺を追い詰める事が出来る程の実力者。嗚呼ジョジョ、早く。早くしろ。




「お前が、俺を甦らせたのか」


矢張り別の本性を隠し持っていたなあ?ジョジョ。
お前だと?おいおい、俺と違って生まれた時から貴族だった奴が使う言葉じゃないだろう。はははは!一人称も本来なら俺だったんだな。随分とカマトトぶってたわけだ。

さあ、かつてのように俺に歯向かい、そして負けるが良い。俺を退屈させるなよ、ジョジョ。
嗚呼そうそう、お前は理解するのが遅いからきちんと伝えておかなくっちゃあならない事があったな。


「ジョジョ、お前は俺のものだ。二度と離れるんじゃあないぜ」


お前がいない百年間は、随分と退屈だった。
俺と貴様は運命で聯繋しているのだから、それを阻む障害は余す所なく除外する。そうだ、死もそれに含まれる。
だからジョジョ、お前はこの先永遠にこのディオと共に生きるのだ。



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