「……ディ、オ?」
永遠の眠りから目が覚めたら、眼前にディオの顔があった。
ハネムーン初日に襲って邪魔してきやがってぎゃいぎゃい叫んで耳が痛いからもう仕方がない共に沈むしかないと首ちょんぱ状態のディオを抱きしめたまま沈没した筈だというのに、ディオの首から下には身体がある。これが正常である筈だが、俺の目には異常にしか映らない。
というより、俺は死んだ筈だ。確かに死んだ。確実に死んだのだ。だが、今の俺は呼吸をしている。生きている。ディオと共にベッドで横になっている。
こんな展開、俺の中の知識には無いぞ!嘘だろ承太郎!
驚きのあまり一切合財の動きを停止していたが、思い立つ。
ディオが寝ている現状はとてつもないチャンスだ。今の内に現状を把握しておこうと思い身体を動かそうとして……動こうとして?
「――ジョジョ」
夢うつつの少しばかり拙い声をあげながら、ディオは薄らと目を開け俺の左頬を撫でた。
しまった!という四文字が頭を支配する。俺はどうするべきだ?声をかける、何も喋らない、手を振り払って逃げる、攻撃する。悩んでいる内にディオは俺の首の後ろに手を回して引き寄せた。
元々距離が近かったというのに更に縮まるのかと混乱する。
「早く目覚めろ、ジョジョ。何時まで俺を待たせるつもりだ」
俺の知っているディオと異なり、あのディオが。あのディオの声があんまりにも切なさを孕んで今の俺の名を呼んだから、思わず俺は大口をあけて間抜けな顔でディオを見つめ続けてしまう。そして、まだ眠気から覚醒しきっていないディオに話しかけてしまった。
「お前が、俺を甦らせたのか」
今の状態は偶然でも何でもなく、ディオが己の意志で俺を呼び起こした。
ディオが放った短い言葉でそう思ってしまった俺は唇を噛んだ。理由が窺い知れず、初代ジョジョがどういう経緯であれ第一部以降に存在するのは知識と反する。この世界にどんな不具合が起こったというのだろうか。
やっぱりというか案の定というか、俺の一声に反応し、力強い眼力で射殺さんとばかりに俺を見つめるディオに苦笑を浮かべる。
「何もかもお前に奪われて、俺の最期もお前にあげたのに……死まで剥奪するとは天晴だよ」
「……」
「あれからどれほどの時間が経っている?良ければ教えてくれ。まあ、眠いなら寝てても良いけどね」
「……ジョジョォ」
「それにしても……随分と世間一般的なファッションセンスから逸脱したんだなぁ、ちょっと面白いよそれ」
「ジョジョ」
ああ、だから、そんな目で俺を見つめてくれるな。
眠気から覚めて、そして正気に戻って俺の知識通りの行動を起こしてくれよ。なあ、兄弟。
戻る | TOP