「もし男女で産まれていたら是非許嫁とさせてもらってたんですけどねぇ」
「ほんまですね、こないかわええんですから」
にこやかに両親同士で会話をしているが、もし本当にそれぞれ男と女で産まれていても許嫁関係になどならない事を私は知っている。
だって原作で見たもの。許嫁いらずで甘酸っぱい両想い繰り広げてたもの。
原作じゃあ絶対見られないであろう娘馬鹿丸出しの父親の会話を呆れながら聞き流す。ジュースが美味しい。
「名無ー」
「なーに?」
「そとであそばへん?」
「いいよぉ!行こう、和葉!」
大阪弁は生後二週間で諦めた。無理だ。イントネーションとか真似られる気がしない。
お蔭で関西人だというのに関東の言葉で話す変人と言う目で見られている私と偏見なく仲良くしてくれる和葉はとても良い子です。自慢の幼馴染である。
「ねー名無、いいなずけって知っとる?」
「うん」
「なんてことばなん?」
「えっと、小さい時から結婚が決まってる当人同士の事だよ」
「けっこん?」
「ずっと一緒にいる人のことだよ。父さんと母さんとは違う家族だね」
「へえー!」
そうなんだ、と感心してきらきら光線を送ってきてくれる幼馴染は今日も可愛い。
「じゃあアタシ!いいなずけする!」
「ええ!和葉好きな人いたの!?」
ショックである。誰だ、私の可愛い和葉のハートを盗みやがったのは……!
和葉のお父さんにチクッてやる!
「なにいうとるん?アタシ、名無がだいすきやで?」
「私も和葉は大好きだけど……誰と許嫁になるの?」
「せーやーかーらぁ!アタシは名無といいなずけするの!」
「ふぇっ」
「名無もアタシのことすきでアタシも名無のことがすきなんやし、とうぜんやろ?」
「あ、あのさ和葉、女の子同士は結婚も許嫁も無理なんだよ?」
「やー!」
やだ可愛い……ってキュンとしてる場合ではない!
「アタシはずっとずっとずうううっと名無とおる!はなれたりなんかせーへん!」
「和葉……!」
「いいなずけしようや、ねえ、名無」
「で、でもー……うーん……」
「いいなずけせなきらいになるー!」
前言撤回。なろう。法律の壁を越えて行こう。
「許嫁になろうか和葉」
「おん!ずっといっしょやで!」
この後、誓いの証と称して和葉のファーストキスを頂いちゃいました。そこいらの男になんかやらんからな!
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