オタクではない


静雄相手。同じ中学に通っていた同級生歌手男主。

中学校最後の年の文化祭で友人にバンドに誘われボーカルで参加することになった主が、誰もいないしいっかなーと放課後の教室で発声練習として歌いながら日誌を書いていたら偶然通りがかった静雄に聴かれ、一発で聞き惚れフォーリンラブされるお話。

人間の脳味噌をダイレクトに揺らして時には感動のあまり失神させることも可能な歌唱技術を持っていたので文化祭本番のライブは大成功。勿論静雄も見に来たよ。素晴らしすぎて泣いた。

友人の親が音楽関係のお偉いさんだったとかなんとかで、子供のライブを観に来たその親から絶対に素晴らしい歌手になれる!と大絶賛され後押しを受けとんとん拍子でデビュー。からの5連続ミリオン突破、数多くの曲をヒットさせる。

それから三年間ほど歌手活動を続け、高校卒業を前にして引退。元々やる気があってデビューしたわけではないし歌いたい曲も歌える曲もやり辛い曲も全て歌い尽くした為、燃えつき症候群にかかった。

初めて歌声を聴いた時から男主のファンになり、CDは全て集めコンサートの予定があれば全力で応募してチケットが当たれば雄叫びをあげ外れれば滂沱の涙を流していた静雄は落ち込むに落ち込む。目を離したらいつの間にか自殺していそうな勢い。

あの歌があったからここまで生きてこれたのに……もういっそ死んでしまおうか……と臨也から送られてきた不良を叩きのめしながらふらふらと下校していると、首輪をつけた子犬がわんわん鳴きながら後をついてきた。どうやら懐いたらしい。

アニマルセラピーを受けてほんわかしていると、静雄に声をかけてきた一人の男子高校生が。この仔の飼い主です、と言いながら子犬を抱き上げる相手の顔をふと見るとサングラスをかけていて地顔が分かり辛い。だが野生の勘で気付く、相手が主だと。

静雄はびしりと固まり、主も子犬を連れて去ろうとするがなんとか立ち直って「フ、ふあ、ファンです!!サインしてください!!」と咄嗟に手に持っていた鞄を差し出す。サイン色紙持ってなかった。

子犬が静雄に懐いたのもあり、散歩に出かけると子犬が静雄の元に向かうのでちょくちょく会うことに。静雄からするとキューピット。子犬様である。

ファンの目を気にして外出時は帽子とサングラスを身に着ける主にやばい素敵だ格好いい!とひたすらファン補正で盲目な静雄。

歌手は引退したが、静雄との交流の末に原作開始頃には名義を変えてソングライターとして働いてる。聖辺ルリや羽島幽平の曲の一部も担当済み。

罪歌事件以前は力を気にして(これでも)一歩引いていたが、力をコントロールできるようになると少しずつ積極的に、今では成犬に成長した元子犬を理由にせずとも主の家に遊びに行けるようになる。

臨也から「君みたいな奴に付きまとわれて可哀想!」とちょっかいが入るが「ファンだから付きまとう形になるのは当然だ!」な静雄にはまったく効かなかった。

主が好きすぎる静雄と、そんな静雄を見てもう一度音楽の世界でやってみようかと思えた主の、ほのぼの話。


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