お前好みになりたいから


「うーん……」

「ナマエ、どうした?なんか悩みでもあるのか?」


腕を組みながら眉根に皺を寄せていると、火を最弱にしてから心配そうに俺の元に駆けつけてくる男。名前はアーサー。イギリスの化身である。そう、イギリスの化身なのである。
先程までアーサーがいた場所はキッチン。今アーサーが作っているのは俺ん家の料理。こちらに漂ってくる香りは勿論腐臭。などではなく、お腹が鳴りそうな芳ばしいもの。
本当にアーサー・カークランドですか?
はいそうです、アーサー・カークランドです。


「坊ちゃんさぁ」

「なんだ」

「……昔と比べて、なんつーか……可愛くなった?」

「……そうか?俺には、あんまりよくわかんねーけど」


ほらあああ!そういうとこおおお!なんでそこで恥ずかしそうにほっぺの色変えちゃうの?大の男がやっても可愛くないよ?可愛くないはずよ?クソ!


「なにかあれば力になるからその時は呼んでくれ。すぐ行くから」

「そっか……」

「じゃあ飯作りに戻るな」


キッチンへ戻っていくアーサーの背をぼんやりと見送る。
……いややっぱ、昔に比べて圧倒的に素直になったよなぁ……何があったんだ、アーサー。あの可愛くないところが可愛い、みたいな点が良かったのに!
まあ今のアーサーを否定しているわけではないが。だが、俺の料理を必死に学んで、代名詞ともいえるツンデレのツンが消失して……坊ちゃんお前さんの個性が著しく変化してるよ!?本当に大丈夫!?


***
過去に「素直な子が好み」と言った仏成代の言葉をずっと覚えてて、実践実行して失敗を繰り返していく内、何時の間にか本当の素直な子に変わっていた英の話。ある日「俺の料理を美味しく作ってくれるとすごく嬉しい」が耳に入ってきたため、フランス料理限定でメシマズ属性も消えた。


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