あれこの仕事うめえ


性格がきつい、強さが怪人並みで怖い、扱いが難しいと協会内で評判が悪いタツマキさんのマネージャーをすることになってしまった。
俺はタツマキさんを写真越しでしか見た事が無いから実像が分からないが噂で判断するととんでもないパワハラを噛まされるのではないかと今から戦々恐々である。


「今日から戦慄のタツマキさんの付き人を務めさせて頂きます、ナマエです」

「ふうん。いいこと、私の傍で仕えるからには迅速な対応をして貰うわよ」

「尽力します」


あれ?これだけ?
事前にどんな毒舌や体罰をくらう事になるのか散々シミュレートした後の覚悟の初日は呆気なく終わった。早速怪人が出てタツマキさんに出動要請が出たからマネージャーとしてサポートしたが、不慣れな拙い仕事ぶりこそやんや言われたが想像したほど酷い言葉では無かったし、体罰も無かった。


「タツマキさん、おはようございます」

「……おはよう。出動要請は?」

「今の所はございません。連絡が来次第直ぐお知らせいたします」

「そう」


んんん?おやおや?
タツマキさんのマネージャーになり一週間経つが……見事に平和だった。今日は運よく機嫌が良いので特に平和だ。


「ちょっとナマエ、牛乳が切れてるんだけどどういうこと」

「あのタツマキさん一つお聞きしたいのですが」

「はあ?何よ生意気ね、さっさと言いなさい」

「牛乳が好きだから購入してるんですか?それとも背を伸ばしたいから購入してるんですか?後者の場合はタツマキさんの実年齢的にもう叶わないと思うのですが」

「……はあ!?うっるさいわね、好きで買ってるだけよ馬鹿にしてるの!??さっさとスーパーに行きなさい愚図!!」


超能力で勢いよくやってきた財布が俺の胴体に突き刺さる。
あ、痛い。めっちゃ痛い。ゴフッと呻きながら床に落ちた財布を拾い上げた。


「タツマキさん」

「まだ居たの!?早くしてよ!」

「タツマキさんは今のままでも充分素敵な女性ですよ」

「〜〜〜ッ!?知ってるわ!そんなことより買い物!仕事は迅速にって最初に言ったわよね!」


耳を赤くさせるタツマキさんの手によって叩きだされてしまう。

(ツンデレ……有り中の有りだな!!)

怒らせるような事をあえて言ったりしなければさっきのようなプチ暴力には合わないし、鋭い物言いもたいして気にならない。というかこの人、中々面白い。おちょくるとプンスコする。反応がめっちゃ楽しい。普通に一緒にいたい。
にこにこと笑いながらスーパーへ向かう。楽な仕事を見つけちまったな、俺。


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