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君と過ごした夏の日


街中で旦那を見かけた

絡められた腕

寄り添う肩

すがるような黄色い声


女と一緒だった


手を振ろうと持ち上げかけた右手を静かにおろす

何なんだよ

誰なんだよあの女

何で旦那はそんなに楽しそうに笑ってんだよ

ちくしょう。

降ろされた右手が自然と握り締められる

二人に踵を返すように路地に逃げ込もうとした、その時。


「お、デイダラじゃねぇか」


旦那に呼び止められた

振り返ると旦那が手を振りながらこちらに歩いてきていた

女が、だぁれこのひとぉ?とやたらねっとりと問いかけている

うるせぇな、お前こそ誰だよ

なんか腹立ってきた。


「旦那…ちょっとこっちきて」


そう言ってオイラは強引に旦那の腕を掴み、路地へと連れ込んだ

後ろから女の呼ぶ声が聞こえているが、そんなのお構いなし

しばらく歩いたところでオイラは旦那の腕を離し、歩みを止めた

それと同時に震え出す体


「…誰だよ、あの女」


自然と口が開いていた

旦那を壁に押し付け、そのままの勢いで強引に肩をつかむ


「誰なんだよ、なぁ!?」


路地に響くオイラの声

霞む目の前

我ながら凄くカッコ悪いと思う

旦那は驚いたようにオイラを見つめ、少し笑った


「…何がおかしい」


今更目を合わせることもできず、下を向きながらそう言うと、旦那はククッと喉を鳴らした


「俺もあの女誰かなんて知らねぇよ」


口から、は?と間抜けな声が出た


「じゃあ、何で…」

「逆ナンだよ、逆ナン。全く、モテる男は辛いぜ」


髪をなびかせるような旦那の演技に思わずほころんだ顔をいやいや待て待てと元に戻す


「でも旦那楽しそうに笑ってたじゃん」

「あれ営業スマイル」

「じゃあ何でそいつから逃げなかったんだよ」

「なんか貢がせてやろうかと思って」


あまりにも淡々と答える旦那に徐々に小さくなっていくオイラの声


「そんなの…信じねぇからな」

「で、途中で面倒臭くなってきたところにお前登場」

「でも…」


まだ言うか?と旦那が笑った


「もし彼女だったら素直にお前について来てないだろ」


そう言うと、旦那は強引に一歩前に踏み出し、それに後ずさりしたオイラはすぐ後ろにある壁に押し当てられるかたちとなった

旦那の足がオイラの太ももの間に割って入ってくる

狭い路地、態勢は逆転

距離が一気に縮まる


「その嫉妬心っていうの?」


目の前にいる旦那の口角が上がる


「たまんねぇ…」


耳元で囁かれた低い声に心臓が跳ねる

そのまま旦那は一歩後ろに下がり、オイラの頭を乱暴にかき回した


「帰るぞ」


予想外の展開にポカンとしていると、旦那は踵を返し、右の手のひらをこちらに向けた


「手」


ほら、と差し出された手の意味をようやく理解し、そっと握る

恐る恐る力を込めると、すぐに振りほどかれ、代わりに指を一本一本絡められた

俗に言う、恋人繋ぎ


「繋ぐなら…こっちだろうが」


そう言う旦那の顔は真っ赤だ

旦那の赤面なんて初めて見たかも

思わずその横顔を見つめていると、手を強く握られた


「あー…もう、こっち見んな!」


顔をオイラと反対方向に背ける旦那はなんだか可愛く見えた

思わず顔がほころぶ


「…何がおかしい」


旦那が言った言葉はさっきのオイラのと全く同じで


「旦那顔真っ赤だよ」

「なっ…お前もだバーカ」


幸せだなぁ、なんて


君と過ごした夏の日



fin.


_______________________



綿雨ゆう様、サソデイの甘々ということで、こんな感じになりました!

最終的には二人とも照れちゃってサソデイなのかデイサソなのかなんだかはっきりしないような…大丈夫ですかね(´・ω・`;)

何かありましたら書き直しますんで、その時はご連絡ください*

リクエストありがとうございました!

   

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