「おい、ガキ」
「ガキじゃねぇもん」
「お前はガキだ」
「うっせぇな、おっさん」
いつもの会話
ガキのオイラとおっさんの旦那
19歳と35歳
その差16
ああ、遠いなぁ
ずっと追いつきたかったんだ
体はもうとっくに追い越したっていうのに、旦那はオイラから逃げるように毎年歳を重ねる
オイラと旦那の距離はずっとこのまま平行線
「今日はいつになく機嫌悪りぃな。キャンディーやろうか?」
そう言ってニヤニヤと笑う旦那はいつまでもオイラを子供扱い
そんな旦那に苛立ちを覚えるのはきっとオイラが素直じゃないから
「おい、聞いてんのか?」
「オイラは、」
「何だよ」
「オイラはガキなんかじゃねぇ!」
思わず旦那を睨んでしまい、慌てて目をそらす
重たい沈黙が空気に流れ込む
旦那は何かを考えるような素ぶりを見せ、何かを思いついたのか口角を上げた
「じゃあ、証明してみろよ」
なぁ?とオイラに詰め寄ってくる旦那
「お前がガキじゃねぇってこと、証明してみろよ」
耳元で囁かれ、吐息が柔らかく耳を包み込んだ
どうやって証明するかなんて、旦那の態度からして予想することは安易
「…旦那、そこ、座って」
オイラがそう言うと、旦那は満足そうに笑った
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「なあ、今から何するんだよ」
床の上に腰を下ろした旦那はオイラを見上げてさも楽しそうにそう言った
わかってるくせに。
オイラはその質問には答えず、旦那と同じ目線になるよう、同様に腰を下ろす
目線が空中で複雑に絡み合う