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眠れない夜がくる


「…先輩」


ああ、畜生

これは嫌な予感だ



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誰もいない広いリビング

背中には壁、目の前にはトビ


「デイダラ先輩」


少しかすれた声

縮まる距離


「…どうして、」


顔を背けたオイラに問いかけるその声は酷く弱った猫を思い出させた


「お前なんか大嫌いだからだ」


オイラは空気を切り裂くようにそう言い捨てる

オイラを弄んで何が楽しいんだ

ふざけた仮面つけやがって

ムカつく


「どけ」


トビの体を跳ね除けようと試みる


「逃げようとしても無駄ですよ」


びくともしないトビはオイラを見下ろして笑う

作戦に失敗したオイラは、下を向き、沈黙を決め込むことにした

頭上からはトビの溜息が聞こえる


「そんなに僕のこと嫌いですか」


頷く。ついでにわかったならさっさとどけ、と小さく呟く


「先輩」


頬にトビの手が触れる

なんだ、この感じは

まるで触れられた部分が甘く溶けていってしまうような


「先輩、こっち向いて」


鼓膜を震わせる艶のかかった声色は同時にオイラのまともな神経を麻痺させてしまったようだ

オイラは言われるがまま徐々に顔をあげる


引き締まった体

広い肩

すらりとした首

そして


「やっとこっち向いた」


そう言って微笑む顔

蛍光灯を背景に影の落ちた赤い両目


「誰。」

「僕がトビですよ」


トビは何故か少し悲しそうに笑い、手に持ったあのふざけたお面をひらひらとさせた

そして再び縮まる距離

薄い唇がオイラの唇に重なる

触れるだけの優しいキス


「今度は逃げなかったんですね」


少し目を大きくして、驚いた様子のトビ

お面を外してくれたのがちょっと嬉しかったからなんて口が裂けても言えない


「好きです、先輩」


耳元で囁かれたその言葉に鼓動が早まる


「勝手にしろ」


その音を掻き消すように呟く

もう一度触れた唇

今度は甘く、溶けるような、それでいて長いキス

このまま時間が止まってしまえばいいのに、なんて思ってしまう自分に赤面

しかしそんな願いが叶うはずもなく


「今帰りましたー」


静寂をかき乱す声が建物に入ってくる


「鬼鮫さんたちが帰ってきたみたいですね」


トビが困ったように笑い、そして再びお面をつける


「鬼っ鮫さーん、チョコ買ってきてくれたっすかー?」


どうやらトビはいつものトビに戻ってしまったようだ

玄関のほうへ向かうあいつをぼんやりと見つめる


すると、トビは再びこちらへ歩み寄り、少しお面を上へずらして


「二人だけの秘密ですよ」


オイラの額へキスを落とした



ああ、畜生

これはいやな予感だ


眠れない夜がくる



fin.


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うおおおおおやっぱトビデイ好きです!!

   

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