「旦那っ…旦那…!」
気がつくと俺は倒れていた
意識を失っていたみたいだ
聴神経を通ってきたなんらかの信号を認識するのに時間がかかった
声
デイダラの声
「旦那っ…オイラをかばって…」
ただ、守りたかった
それだけだった
「泣くなよ。まだ死んだわけじゃねえ」
ああ
どうやら俺は、もう、空気の振動を作り出すことが出来ないらしい
俺が発したつもりの言葉はただの空気となり
行き場をなくし
ただそこに沈黙というものを残して音もなく消えて行く
お前に届くことはない
でもな、
後悔とかそういうのは無いんだ
お前を守れた
それだけでもう充分
ただ、一つ心残りがあるとすれば
「愛してる」
この言葉がもう届くことはないということだろうか
またしても音もなく消えて行く
届かない
もう
「オイラも愛してるよ」
最後に見たのは涙でぐしゃぐしゃになった君の笑顔
solute people
(君を好きになれてよかった)
fin.