俺がまだ、10歳になる頃の話しだ。

俺は市場におつかいを頼まれた。母さんが風邪をひいた。父さんは仕事でいないから、俺が行くことになった。母さんから、買うものを書かれた紙を貰い、それと逆の手には買い物カバンを持つ。似合わねぇ。そう思いながらも、俺は市場に向かった。

市場に向かい、買うものリストに目を通す。これを買えば家に帰れる。早めに終わらして帰ろう。そう思ったときだった。

「テメェ!ふざけんなよ!」

家と家の細い路地から大きな声が聞こえた。細い路地の奥を覗いてみると、いじめの現場だった。いじめられているのは黒髪の東洋人らしい女の子。その手には小さな小鳥がいた。いじめているやつらも、女の子も俺と同い年ぐらいだろうか。

「悪いのはあなた達でしょ?こんなことをして、恥ずかしいと思わないの?」

「この女…っ!!」

一人が女の子に棒を振りかざそうとした瞬間、俺は持っていた買い物カバンを思いっきり投げた。

ドカッ!

「いってぇ!!誰だ!?」

買い物カバンは見事に命中。みんなが俺を一斉に見る。

「なに女の子をいじめてんだよ。今、大人を呼んだぜ」

大人、という言葉を聞いて、いじめていたやつらは顔を青くする。そして急いで逃げて行った。結構あっさり逃げるんだな。

いじめられていた女の子のもとに行き、投げた買い物カバンを拾う。すると女の子は立ち上がり、俺に一礼した。

「あの、助けて頂いてありがとうございました!」

「いいってそんな………の」

艶(つや)めく黒髪に、吸い込まれそうな大きな黒い瞳。白く細い手足。思考回路が止まる。俺はただ、女の子を見つめた。

「飛べない小鳥がいじめられていたの。本当に助けてくれてありがとう。あなた、いい人ね」

「あ、あぁ……いや、えっと…」

俺は目をキョロキョロさせ、真っ直ぐ女の子を見れない。なんだか恥ずかしい。すると女の子はクスッと笑った。

「また会いましょうね」

「お、おう………」

女の子はそのまま去って行った。俺はその後ろ姿をただ見つめていた。綺麗な女の子だった。こんな感情、はじめて知った。そう、これが俺の初恋だった。



初恋の色
(あ、名前聞くの忘れた………)





あとがき

以前、アンケートでいただいたジャン夢を執筆させて頂きます。これもシリーズになる予定です。設定は勝手ながら、こちらでいろいろと変えさせて頂きました。内容としましては、ジャンの初恋。これからのストーリー展開にもご期待頂けたらと思います。
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