エレンと喧嘩した。付き合って5年。今まで喧嘩したことは何度かあるけど、いつも小さな喧嘩で、翌日には仲良くなっていた。なのに今回は違う。もうエレンと口を聞かずに7日が経った。
原因はどうやら私らしい。私は訓練兵団で先生をしていて、この前、訓練兵に告白された。私とエレンより2歳年下の、明るく優秀な男の子だ。その現場を、どうやら偶然通りかかったエレンに見つかったらしい。それからエレンの態度は急変。「先生のくせに」とか「巨人の俺に嫌気がさしたのか」とか。私がなにを言っても聞いてくれなくて、告白を断ったと言っても、エレンの態度は冷たかった。
エレンとは訓練兵に告白をされる前から、ほとんど会っていなかった。だから月に4、5通ほど文通をしていた。エレンの手紙からは、私を愛しているということが痛いほど分かるくらいの気持ちが込めてあり、愛されているんだと思うと素直に嬉しかった。だから私も、エレンに負けないくらいの愛を綴(つづ)った。
なのに…。
「先生、プリント集めますか?」
一人の女の子の訓練兵が、心配そうに聞いてきた。授業中ということを忘れ、すこし考え事をしていた様だ。
「あ、そうね!じゃあ一番後ろの人、集めて」
こんなことをしていてもダメだ。ちゃんとエレンにあやまらないと。私はエレンにあやまると決めた。
***
職員室で全員分のプリントを確認していた時、部屋のドアが荒々しく開けられた。びっくりして振り返ると、そこには調査兵団の人がいた。目を真ん丸にして、息を荒げて、私の名前を連呼していた。私が手をゆっくり挙げると、調査兵団の人はかすれた声で言った。
「イルゼが…イルゼが、壁外で亡くなった」
「えっ…イルゼが…?」
イルゼは優しく正義感のある女の子で、私とエレンの親友。私とエレンが付き合うきっかけを作ってくれたのもイルゼで、イルゼは恩人。そのイルゼが亡くなったなんて、とてもじゃないけど信じられない。あまりの唐突なことに、涙さえ出ない。
「あぁ。残念だが、遺骨も遺言もない…」
「そうですか…。あの…イルゼの形見はありませんか」
「今度、他班が遺品回収に行く。それに同行してはどうだ。距離も壁から近い。うまく行けば、巨人に遭遇することなく帰ってこれる範囲だ」
「私…行きます。立体起動なら授業で教えていますし、馬にも乗れます」
「分かった。伝えておこう」
私の心に迷いはなかった。イルゼがいなければ、私はエレンと付き合ってはいなかった。今はエレンとこんな仲だけど…きっと修復して、天国のイルゼを喜ばせてあげないと。私はイルゼのために、初めて壁外に行くことを決めた。
あとがき
続きます!内容は切→甘の予定です。しかし、いつもオリジナルのキャラクターを出すのが大変です…。
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