泡となりて
調査兵団に入団して3日目。
この3日間は、調査兵団のことについて全ての説明を受けた。体力的にもキツい毎日が続いた。私は眠い目をこすりながら、新しく与えられた部屋を出て、走って外へと向かった。
今日はリヴァイ兵長と壁外調査について話し合う。昨日、私がリヴァイ兵長の補佐になったと聞いた時は、ただただ驚いた。とても緊張する…。失敗して外されないといいのだけれど。
リヴァイ兵長が言っていた時刻より、早く着いた。よし。
「やっと来たか」
「リヴァイ兵長…?」
振り返ると、建物にもたれかかり、腕を組ながらこちらを睨むリヴァイ兵長がいた。いつからそこにいたんだろう。早すぎる。
「す、すいません…。遅れました」
「いや、いい。俺が早く着いただけだ。行くぞ」
私はリヴァイ兵長の後ろをついて歩く。リヴァイ兵長は全く喋らない。怒っている様子ではなさそうだけど…。
そもそも、どうして新兵の私が、いきなりリヴァイ兵長の補佐に?緊張しまくりだ。
「………」
「………………」
「………なぁ、名前」
「はい、なんでしょう」
「お前はなぜ調査兵団に入った」
いきなりリヴァイ兵長に真面目なことを問われ、思考回路が停止した。
「…両親の敵討ち、です」
「…そうか。俺たちはいつでも命を落とす覚悟がなければならない。お前にはそれがあるか?」
命という言葉を聞いて、体が凍りついた。訓練兵団に居たときは、それは当然のことだと教わってきたが、いざ調査兵団になってみると、それが怖い。どうして…。
でも、こんな感情は持ってはいけない。私は死なない。いや、死ねない。両親の為にも、エルヴィンさんの為にも、国民の為にも…。
「私は…死ぬつもりはありません。最後まで…戦い抜きます」
私がそうはっきり言うと、リヴァイ兵長は歩みを止め、振り返った。その表情は、私を睨み付けているようにも思えた。新兵の私が、言い過ぎただろうか。
「………すまない、いきなりこんな質問をしてしまって」
「…えっ?」
いきなりリヴァイ兵長が謝ったので、私の体の緊張が抜け、一気に体が軽くなった。そしてリヴァイ兵長は、不器用に私の頭を撫でた。
「リ、リヴァイ兵長…?」
「調査兵団で生存できるのは、ほんの一握りの人間だ。毎回、壁外調査で多くの兵が死んでいる。でも…名前は死なせない」
リヴァイ兵長は優しい声で言った。そしてリヴァイ兵長は撫でていた手をおろし、何事もなかったかのように再び前を向いて歩きだした。
私はただ呆然として、リヴァイ兵長の後をついていくしかなかった。