すり抜けた恋
あれから3年の時が経ち、訓練兵団を首席で卒業した私は、迷わず調査兵団に入った。憲兵団から何度かお誘いがあったが、全て断った。私は調査兵団に入る為にここに来た。それだけは忘れてはいけない。
調査兵団の入団式が終わった後、私はエルヴィンさんのところへ向かった。いきなり訪問して迷惑にならないだろうか。そんな不安を抱えながらエルヴィンさんの部屋に入った。
「エルヴィンさん、私です…。お仕事中失礼します」
「ん…?あぁ、名前じゃないか!卒業おめでとう。そして調査兵団にようこそ」
エルヴィンさんは私の顔を見るなり、椅子から立ち上がってこちらに歩いてきた。もちろんお仕事はそっちのけで。そして大きな手で、肩をポンポンと優しく叩かれる。なんだか恥ずかしい。
「エルヴィンさん…あ、もうエルヴィン団長ですね!」
「そうだ。でも、君が呼びやすいように呼んでもらえればいいよ」
「分かりました。エルヴィンさん、これからもよろしくお願いします」
「あぁ、もちろんさ」
すると後ろのドアがコンコンとノックされた。するとエルヴィンさんは、「挨拶しておきなさい」と小さく言った。
「入っていいぞ」
「失礼する。エルヴィン、この報告書なんだが…」
入ってきたのは小柄な男性。そして人類最強といわれる調査兵団の兵士長。リヴァイ兵長だ。この兵団の中で、彼を知らない人はいないだろう。
リヴァイ兵長は私を見るなり、固まった。エルヴィンさんと新兵がこんなに親しく話してるから、怒ったのかな…。私はエルヴィンさんに言われた事を思いだし、挨拶をした。
「は、はじめまして…」
「………」
リヴァイ兵長は未だに驚いた様子で、何も喋らない。しかも噛んじゃったし…。ど、どうしよう…本気で怒らせた?私があたふたしていると、エルヴィンさんが口を開いた。
「リヴァイ、すまないな。こちらは新しく調査兵団に入団した名前・苗字だ。よろしくな」
エルヴィンさんはまるで、私を自分の娘の様に紹介してくれる。するとリヴァイ兵長がついに喋った。
「…こいつが今年の首席の…。俺はリヴァイだ」
「はい!よろしくお願いします」
リヴァイ兵長、私のこと知ってたんだ…。なんだが意外すぎて驚いた。その反面、すこし嬉しい。いままで頑張って勉強や訓練をしてきてよかったな…。
「名前、君はいろいろと忙しいだろ?もう戻りなさい」
エルヴィンさんの優しい一言で、一瞬にして現実に戻された。訓練兵団を卒業したことにより、住む部屋も変わったのだ。部屋は荷物だらけで汚い。
「そうでした…。では失礼しました!」
「またいつでも来なさい」
「はい!リヴァイ兵長、お仕事の邪魔をしてすいませんでした」
「あぁ」
私は二人に礼をして部屋を出た。
リヴァイ兵長と話ができた。新兵にしては出すぎたかな…。とにかく、今は部屋移動を終わらせないと…。