蒼い想い出
私は兵長を見た。すると兵長も私を見る。この人を好きになるなんて…そんなことがあり得るのだろうか。私は目線を反らし、再び雑巾をバケツの水につけた。すると、兵長がレニさんに問った。
「で、なんの話をしていたんだ」
「恋のお話ですよ」
「恋?」
「名前ちゃんの好きなタイプとか…」
「おい、それはどういうことだ」
そんな馬鹿な話をしやがって、と怒られるのかと思えば、リヴァイ兵長は話に食いついてきた。意外すぎて混乱しそうだ。
「名前」
「は、はい!」
いきなり名前を呼ばれ、私はあわてて振り返った。心臓に悪いよ…。
「お前、好きな野郎がいるのか?」
「え…い、いません。今の仕事に熱中しているので…」
「そうか。ならば好みのタイプはなんだ?」
これ、新手の拷問かもしれない。横目でレニさんを見れば、必死に笑いを堪えている。そしてレニさんは「あ、私、バケツの水変えてくるね」と言って逃げていった。レニさん…!
「で、ないのか?」
兵長の声のトーンが下がる。下手に答えたら、それこそ削がれる…。なにか答えないと…!
「あの…!さっ……鎖骨…とかですかね?」
「鎖骨?」
勢いでいってしまったけど…鎖骨って…私、なに言ってるんだろ…!恥ずかしい…。絶対兵長に変人だって思われる…。
「…そうか、鎖骨か」
「そ、そうです…。鎖骨ってかっこよくないですか?」
「俺はそうは思わないが…。まぁいい。さっさと掃除に戻れ」
「はい!」
兵長は納得したように戻っていった。な、なんだったんだろ…。
そんなことより!逃げたレニさんには後でなにか言っておかないと!