君を手離した


馬に乗り、兵長のすぐ後ろを歩く。壁外に出たのはこれが初めて。今回の任務は、巨人の生態について調べること。生け捕りも考えているらしい。

私の心の中には、鳥籠から出されたような、不思議な解放感と、巨人に対する恐怖心が重なる。私と同期で、一緒に調査兵団に入った仲間は、緊張しているのか、表情が固い。無理もないだろう、新兵の死亡率は高いのだから。

巨人と遭遇することもなく、壁から3キロほど離れた頃、ついにエルヴィンさんが指揮をとった。

「リヴァイ、さっそく作戦にうつる。リヴァイ班は右方向へ進んでくれ」

「了解した」

私はリヴァイ兵長のあとを付き、右方向へ馬を走らせた。リヴァイ班の約30人の兵士が、ぞろぞろとそのあとを走る。

私がエルヴィンさんの横を通るとき、エルヴィンさんと目があった。その目はどこか心配そうで、でも強く、「死ぬなよ」と言っているように思えた。エルヴィンさんは忙しくて、ここ最近は言葉を交わすことは無かったけど、きっと私に、いろいろ伝えたかったんだと思う。両親のことも、リヴァイ兵長のことも…。

しばらく走っていると、後方から巨人が来た。12メートル級と13メートル級。けっこう大きい。巨人はこちらに少しずつ近付く。すると副班長が大声をあげた。

「兵長!巨人です!ご命令を!!」

「奇行種ではないだろう。目的地はすぐそこだ。先を急ぐ。全員、馬を走らせろ」

「はい!」

リヴァイ兵長の判断で、みんなは馬を走らせる。巨人は猛スピードで接近してくる。追い付かれたら食べられる。そう思うと、心臓の鼓動が速くなる。逃げなくちゃ。逃げなくちゃ。額からは汗が落ち、心臓は口から飛び出そうで、吐き気がする。それでも必死に走った。

目的地である古い建物のところまで走ると、巨人は飽きたのか、疲れたのか、私たちのあとを追って来なくなった。まだ心臓がうるさい。みんなの顔は疲れきっていて、全然戦えそうにない。私は全員の安否を確認し、兵長に報告した。

「リヴァイ兵長、今のところ、死傷者はいません」

「そうか。みんな、ご苦労だった。今回は巨人に遭遇する機会が少なかったからな。では、この建物の中に入るぞ」

「はい」

この建物は十数年前に、調査兵団によって建てられた、石造りの家。今日からこの建物に泊まる。しかし、建物の石と石の間からは草花が生え、最近、この建物を使った形跡は見られない。兵長や他の班員に続き、私は建物の中に入った。中は住めないことはないが、埃(ほこり)っぽく、汚い。

「汚ねぇ…。お前たち、いますぐ着替えろ。すぐに作業にうつれ」

「「「はい」」」

リヴァイ兵長の一言にみんなは返事をかえすが、新兵にとっては何かわからない。私は思いきって聞いてみた。

「リヴァイ兵長、何をすれば…?」

「決まっているだろう、掃除だ」

そういって兵長は上着を脱いだ。

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