人魚の目覚め
「痛ぇ………」
俺は自室で腕にできた傷の手当てをしていた。手当てをしながら、今日あったことを思い出す。
自分でも驚いた。名前がいないと聞いた瞬間、全身に電流が走ったような衝撃を受けた。そして他の兵士の声も聞かず、俺は再び森の中へ飛んでいった。
名前がいないだけで、とても不安になった。頭が真っ白になった。それと同時に、名前が死んでしまったらどうしようかと思った。いなくなっただけでも、こんなに不安なのに、死んでしまったら、俺はどうなるのだろうか。
名前を見つけたとき、俺の心情は不安から安心に変化した。急いで駆け寄ると、名前は意識を失っていた。名前を抱き上げようとしたとき、腕にズキッと痛みが襲った。どこかの木で切ったのだろうか、腕には切り傷ができていた。切り傷にも気づかなかったとはな…。
俺は名前の立体起動装置から、ガスの入った入れ物を取り、自分の立体起動装置に装着した。俺のほぼ空のガスの入れ物はその場に捨てた。よくここまでガスがもってくれた…。俺は名前を抱き上げて、エルヴィンのもとに戻った。そしてエルヴィンに預け、そのまま自分の仕事に戻った。
だから俺は名前の今の状態を知らない。目を覚ましたのか、それともまだ眠っているのか。エルヴィンとハンジらがずっとついていると言ったが、さすがにもう夜だ。だれもついていないだろう。だったら俺が見に行くか。
手当てを終え、立ち上がった瞬間、ドアがコンコン、とリズムよく鳴った。こんな時間に一体誰だ…。俺は短く、「入れ」と言った。
ガチャッとドアがゆっくり開く。
「へ、兵長…」
「…名前か?」
「はい、夜遅くにすいません。今日のお礼を言いたくて…」
俺は目を疑った。どうして名前がここにいる。ましてやこんな時間に…。
「入れ」
「え、でももう帰りま…」
「いいから入れ。早く」
俺は名前の手を引っ張り、強引に部屋に入れた。誰かに見られていたらどうするつもりだ…。こいつには躾が必要かもしれない。