深海に差し込む光
目が覚めると、私の横には忙しいはずのエルヴィンさんがいた。椅子に足を組んで座り、書類に目を通している。私は綺麗な白いベッドの上に寝ているようだ。目の前にはただ天井が見える。
私が半身をゆっくり起き上がらせると、エルヴィンさんは驚いた表情を見せた。起き上がった瞬間、背中に痛みが走り、顔を歪ませた。
「名前、起きて大丈夫なのか?どこか痛むかい?」
「はい。背中がすこし痛むくらいで…。ここはどこですか?」
私がそう問うと、エルヴィンさんは医務室だと答えてくれた。そして、私が意識を失っている状態だったことも教えてもらった。どうやら私は半日、ここで寝ていたらしい。外は暗かった。
「ごめんなさい、エルヴィンさん。…せっかくいいところを見せようと思ったのに」
「心配することはない。次に頑張ればいい。そんなことより、目が覚めてくれて良かった」
エルヴィンさんは、落ち込む私を必死に励まそうとしてくれている。仕事もたくさんあるはずなのに、私のそばにいてくれて…本当に優しい人。きっと、私を見つけてくれて、ここに運んでくれたのもエルヴィンさんなんだろう。お礼を言わないと。
「エルヴィンさん、私を見つけて頂いてありがとうございました」
「名前を見つけたのは私じゃないよ」
エルヴィンさんは苦笑いをする。…じゃあ誰が私を?
「君を見つけたのはリヴァイなんだ。こんなことを言って信じるかはわからないけど、終了時に名前がいないっていう報告が入った時、誰よりも先に探しに行ったんだよ。あのリヴァイがね」
「…えっ」
リヴァイ兵長が…?そんな…。
「あんなに焦ったリヴァイは久しぶりにみたよ。きっと名前は、それほどリヴァイに期待されているんだ。リヴァイに会ったら、礼を言っておきなさい。君をここまで運んでくれたのもリヴァイだからね」
エルヴィンさんは笑顔で言い、私の頭を撫でた。そしてエルヴィンさんは立ち上がり、医務室を出ていった。
リヴァイ兵長が………私を?でもエルヴィンさんは本当の事をいっていると思う。嘘をついている表情ではなかったから。じゃあ早く兵長に会いに行かなきゃ。
私はまだ痛む背中を全く気にせず、医務室から飛び出した。