死に憑かれている。或いは夜神月―いびつでありながらも美しい名前――もまた被害者といえるであろう。死と善と生と悪と。本来それらは並び立たない次元のものだ。人間は孤独な生き物である。彼等だけが野性を棄て動物であることを拒み、生と死のサイクルから逸脱している。生物が機械の模倣をしていると言っても良い。確固足るものなどないということ。彼は確かに愚かで惨めではあるのだが私は彼を否定しきることはついぞ出来なかった。