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果てなど無いのに極(き)まっている。

漠とした今の中にたゆとうていた。何を思うでもなく何を知るでもなく。それは人間という生き物の生き方のひとつの様式であり、存在の基本だった。弛んで、たゆんで、だらだらと、存(い)る。これがどうして許されないのかよくわからぬ。にんげんなんて、ぼうとそこにあるだけで充分で、だってただのそれは物質だ。物質なのになぜ、内とか外とかを含むのだろうか。人間という存在の歪みはそこから始まっているように思われる。目に見えないものが彼等を満たして、だから傷ついたり争ったりなんだりの、行き違いが起きるのである。死にたいなとも生きたいなとも思わない。ただそこにあり、消えるときは消える。けだものはそうして生きているはずだのに、人間とやらだけがそれを拒むのだから、なんともおかしなことだ。人間、人間、人間。痛いのに生きる。つらいのに。みんな過去になり、いつかは死ぬのに、不安でたまらなくて、生きるというのは怖ろしいのに。人間とは、何か?
人間とは、何か?
人間とは、どんなにか愚かしくて賢(さか)しいのだろう。
総てが発起させる、SHを取り巻く総てのものが、彼に人間とは何かの疑問を抱かせ去ってゆく。わたしも生憎にんげんである−SHは考える。考える、考える。にんげんという土壌のうえでSHは、人間について思考する。怖いことだ。けれど彼はそれをする。しなければならない。歴史、生物、周囲のひとびと−総てが彼にそう差し向ける。ひと、ひと、ひとひとひとひとひとひとひとひとひとひとひとひとひとひとひとひと。夥だしいそれは頭が割れそうになる。おまえが痛い。在り方。生き方。動物、生殖、保身、同心、進歩、よりよい、みんなのために、自分の――ために。
SHは喘ぎたくなる。わたしはなにを信じて生きればいい。なにを?なにを?なにを、答えはない、あるはずもない、ああでも彼はそれを求めるのだ。馬鹿みたいな愚かしさで。爪が剥がれようと目が落ちようと耳が奪われようと、しねば終わりだから生きるのだ、生きてそれを求めたいと心の底から望むのだ。


111103


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