恋とはどんなものかしら





(嗚呼)
(死すら禁じられたことならば)

喘ぐような幸福に身動きがとれないでいる。
光りが満ちて逆に行く処が何処か知れない。
喘ぐようなこころをどうすれば掴み直せるのか分からない。

ひかり弾くきみ。

目が合えば情けないように眦を下げる。
どくん。

愛しているとはもっと穏やかで、滋味のある物ではないのだろうか。
生々しい性欲や冷え冷えとする言葉からは距離を隔てた水谷と三橋の恋はなんだか壊死してしまいそうになるものだった。海のような情熱がぶりきの三橋の体を錆びつかせる。
それとも砂糖が体を壊していくという比喩のほうが似つかわしいか。ただ甘い、純度だけがひたすらに高い共感と親密さがそこにある。
水谷は一体何を考えているのだろう。こんなにも深く溺れたら戻ることも出来ないだろう?

窒息死して沈んでゆくほか無いのだろうか。
(嗚呼)
くるおしさだけが存在している。

三橋は食べるのがすきだ。
食べなければ生きてはゆけぬ。実際問題そうだけれど、食というのはそれ以上に三橋の悦びの対象だった。
胃の腑が満たされるのがひどく嬉しい。舌であじわい歯でかみ砕き喉を滑ればそれは三橋の球を投げる力となる。

投げること食べること眠ること。こうして考えれば三橋の身体は随分シンプルな物事だけで構成されているようにおもう。

(――フヒ)

それで良いと思った。三橋は馬鹿だから複雑なことなど分からぬ。簡素であればあるだけ利便性は高いのだ。だってそうだろう?数学だってそうではないか。シンプルなものをみなこぞって追いかけ続けている。

(あなたとの恋に溺れるようなの)
緩やかに死んでしまうようなの。
三橋のくるしみを水谷はわかっているのだろうか。
ぐずぐずと溢れる止水弁の壊れたこの感情の渦は一体何であるのだろう。
三橋は回らない頭で考える。

(もしも)

(死すら禁ぜられているのなら)

うみに溺れる自分達は如何したらいい。行き着く先は死でしかないのに。

(嗚呼)

泣いて仕舞いそうだった。
(せめて)

貴方は骨までわたしのことを愛していて

そうすれば深い深い海の底でも
縋って泣くことができるでしょう





20110622修整#lastup


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