集と鳴子





※15禁くらい
※甘くない











抜けるように鮮やかな橙に手をさしいれて、松雪集は彼女のやわらかな髪を梳いた。
幼なじみは体をすくませる。鳴子はもうすっかり女の体をしていた。うなじ、乳房、腰、股間―脚。全てがいやらしいくらいに自らの性を主張していた。意外と肉づきが良い。彼女は華奢だろう、そして肌はもっと―けぶるように白いだろう。集は何十回も夢想した姿を脳裏にうつす。碧い眸、銀色の髪、細い腰。
胸はこんなに大きくない、きっと平たい。集はベッドに寝そべる幼なじみの体を眺めて脳の中の少女と較べていった。
宿見は言った―めんまは成長している、そして美少女だ、と照れながら。
橙色が見上げてきたからくちづけた。何度繰り返しても彼女は慣れない。馬鹿みたいに頬を染めて全身を強張らせる。「恐いのか?」そう尋けば橙ははにかみながら頷いた。「じゃあやめるか」そう言えば、ばかな橙はいやいやと首を振る。やめたほうがいいと思う。おまえはここでだって―本間の代わりだ。そう教えてやるほどに松雪は善人ではないし枯れてもいなかった。彼だって性欲をもてあます高校生男子である。
安城の頬は熟れたように赤い。伏せた眸の睫毛には涙が溜まっていた。泣くほどいやならやめればいい。
胸を揉む。柔らかくて気持ち良かった。赤い乳首、指で掠めると喉の奥で唸るような声を出した気がした。
「おまえ男が何だか知らないだろ」
「知るわけないでしょ」
力無く彼女は言う。
「元気ないな」
「うるさい」
「…おまえさあ、ヤる相手間違ってるよ、わかってる?」
「黙れバカ」
バカはどっちだ。バカ。何ともいえない感触をした胸を集は繰り返し揉んだ。
上目遣いだからいくら睨んでも効果はないのに。しかも涙目で誘っているようだった。
「おまえさあ、」
手を集はそっと下にずらした。陰毛を触る。かさかさとした感触。ひっ、と息を呑まれた気がする。
「宿見とこういうことしたいって思ってた?」
「…何それ」
男の好きはさ、太股を撫でる。ゆっくりと膝、ふくらはぎ、くるぶしと感触を確かめるように下ろしていった。
「イコールやりたい、ってことだよ、大体」
「…どみは、そんなやつじゃ」
「あ、そう」
踵までいったから、集はゆっくりとベッドの上に乗り上げた。軋む。スプリングが浅はかさを糾弾していた。体の上に覆いかぶさる。四つん這いになって、恐怖を浮かべるばかおんなの眸を見つめた。よく手入れされた唇。桃色に光る。指で触れると視線を反らされる。乳房が揺れる。
こいつはこのためにどのくらい準備をしたんだろう。無駄毛を剃って肌を手入れしてにきびをなくして服を選んで爪を塗って化粧をして香水をつけてシャワーを浴びて。男に抱かれることにそんなに時間を費やす価値があるのだろうか。丸裸にされた体のなかで橙の髪だけが浮き立っていた。
本間芽衣子の姿が脳裏に弾ける。集が誰よりも焦がれている、ひらたい胸をした少女。だがそれは、―それは仕方のないことだった。彼女は死んでしまったのだから。幾ら自分が芽衣子の幻想を追い求め狂っていったとしても、松雪は全く構わなかった。彼にとって「めんま」を忘れることこそ最も耐え難った。彼女が自分のなかから失われることを集は何よりも恐れていた。
安城の唇が電灯を反射して光っていた。頭のなかでは黒い髪の、琥珀色の瞳の男を乞うている女。彼女は動きを止めた集を縋るみたいに見上げた。色づいた頬。柔らかいしっとりとした肌。二人は全く同じことをしていた。集の指は―「じんたん」の指、きっとそうだろう、それともこいつはその恋が、他の男に抱かれたくらいで消えるものだとでも思っているのだろうか。
救いようのない行為だと感じる。ただ身の内の性欲が、女という物を欲して喉を鳴らし始めていた。留まることは出来なかった。二人は時間が流れるのを留めることは出来なかったから、成長することを拒むことは出来なかったから。曲がりくねる思慕、よるべないパレードはゴールのないままに粛々と進み続けていていつ停まるのか知れなかった。
電灯を落として集は橙の髪に口づけた。




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