僕はその河原がすきだった。夕日のときにはそこから見れる風景は圧巻で、いや、もちろん晴れた日だって雨の日だって、そこから眺めることの出来る風景は美しいに違いなかったけれど――とにかくそこから眺める夕日にはどこかしら、胸を打つものがあった。どうして夕日をえり好みするのかというと、単に僕がその河原を訪れることの出来る時間は大抵夕方だったからというだけの話しだ。進学高校の生徒だったらそんなものだろう。
それまで僕はとりわけ美しいものを好むことはなかったし、何かを特に好いたり嫌ったりすることもなかった。世はなべてこともなく、時は淀みもなく緩やかに。ずっと僕はそう生きてきたし、かくあるべしとそう教えられてきた。母の愛には感謝している。ライト――彼女はやさしげな声で言うものだ。誰かを嫌ってはいけません。誰かを妬むこともそねむことも。咎めることも謗ることも。悪いことをしても許してあげなさい。人はみな間違えるものだから。嘘をついてもなりませんよ。周りの人達を悲しませてもいけません、ライト、あなたはみんなを愛してあげてね。
母は僕を…はじめての一人息子をたぶん、天使かなにかだと勘違いしていたのだろう。自分でいうのは憚られるけれども―僕はまあ、普通よりもだいぶ、きれいな顔をしていて頭も良かったから。
愛してあげてねライト。人を憎まないで――…

河原に座って音楽を聞きながら僕は母の言葉を思い返していた。それはやさしい世界からの言葉だった。天国でつかわれる言語のようだ。(みんなでやさしくあいしあって、しあわせに…助け合って……)




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