暗黙情事


関益
関口(独身にしておいてやってください)×ドSビッチ益田R18

※りば仄めかしあり
※※うちの益田は対関だとかなり攻め仕様になりますそして性格極悪
※※※今まで書いてきた中で一二を争うくらい酷いと思ったのでお察し





―土足じゃちょっと馴れ馴れし過ぎて、だけど素足じゃ物足りないから

(あ痛い。)
周期は殆ど決っている。理屈は不要だった。

だいてくださいよ、と益田は関口にすがる。すがるといっても、それは、懇願というよりは脅迫だ。愛情ではなく加虐に近い。
関口はそんなとき、大変に汗をかいて全身を縮める。全身で、内向的な拒絶を示している。それを見てとり、しかし無視して、益田はそんな彼のせなかにしなだれかった。
「僕関口さんにつき合って欲しいなァ」ぎゅうと首に腕を回し、益田は関口の耳元でささやく。べったりと体をくっつけて、足さえ絡めてみた。関口は俯いている。表情もほとんど判らない。一言も言わない。でも関口は益田を振り払う、勇気というか、意気地を持たない。だから益田はこっそりほくそえむ。下宿先の部屋の鍵を手に握らせて、来て下さいねと、その頭にひとつキスを落とす。
彼の掌はひどく汗ばんでいた。

ぱしり。
たった音はごくよわく。それも力を加減したのだから当然か。
目をすがめ、益田は関口を眺めた。いずれにせよ、彼は来たのだ。それ以外に説明は要らなかった。
益田はまだ事務所にいたときの格好から着替えていない。帰ってきたら鍵がひらいていて関口がいた。身を縮こまらせてうつむいて、ぽつねんと座っていた。それを見たらまたわるいやまいが顔を出す。土足のまま畳の上に乗り上げて、関口が顔をあげるかあげないかのうちに、強引に押し倒して唇を奪った。ばたばたと身をもがく関口にいらついて、益田は動くなと吐き捨てた。関口のしわだらけのシャツを裂くように脱がせた。
(あなたは僕の人生をくるわせたのは榎木津さんや中禅寺さんばかりだと思っているみたいだけれど)

てのなかの乗馬用鞭を、掌に打ち付けてひたひたと鳴らした。堪えるように俯いている関口と、背中のちいさな鞭の跡。関口はしづかにしている。少し青ざめているだろうか。益田は何もいわず、そのまま自分も服を脱ぎ始めた。関口はじつと益田を見ている。ただしくは、きっと、益田の動向を。カーティガンを脱ぎ、ネクタイを抜き、シャツのボタンを外す。なんだかストリップのようだった。わらえる。だからちょっと笑った。そしてそのまま関口に視線をやった。
「抱いてほしいって言いましたよね僕」
抱いてくださいよ。彼を睨むみたいに注視た。関口は避けるみたいに目を反らす。そしてそのまま関口は、ぼそぼそと言った。この日ははじめて益田は彼の声を聞いた。
「もうやめよう、益田くん」
「…はあ?」
自分でも驚くほど乱暴な声が出た。てのなかの鞭を、ぎゅぅと益田は握る。「嫌ですよ」
そう言葉を発した直後、益田の顔は歪んだ。関口はそれに、少し目を丸くしてから、また視線を落として、言った。
「このところずっと考えていたんだ。一体、君と僕の関係はなんなんだろうとね。君は僕のことが好きなのだろうか。もしかしたらこれは、益田龍一流の愛の表現の仕方なのだろうか。だとしたら僕は良識ある大人として、応じてやらねばならないのだろうか、」
「僕はあんたを愛してなんかない!」
関口の言葉をそう益田は遮った。聞き苦しく割れた声だった。しかし、関口はちらっと益田を見遣っただけで、言葉を続けた。
「…君の証言は実証性を持たないんだよ益田くん。なぜなら君は嘘つきだ。君の言葉に意味はない」
言い切る関口に益田は唇を噛んだ。繊細と思えば、豪胆で。阿呆かと思えば賢く。敏感かと思えば鈍感だ。恐れ入る。これだから。関口巽というにんげん。
「――意味のある言葉なんて言わないのは関口さんのほうじゃないですか?」
一つ益田は反撃をした。言ったあと関口は伏せた目のまつげをそよとも動かさず問う。
「益田くん。こんな関係は、不毛だと思わないか」
「不毛じゃ悪いですか?僕はあんたのことなんてどうでもいい、いいからあなたを誘うんですよ。どうでもいいから、あなたを傷つけるんですよ。…それに結局、あなただって、来たじゃないですか。関口さん、」
そこにはいくつかの矛盾がある。それが関口にはよくわかる。けれど白日の許に晒すのは二人の性ではない。それは探偵のやることだった。(この世に探偵はひとりだけ、)
関口は粘性の口調でつぶやくだけだ。
「傷つけて楽しいのは、大切なものだけじゃないか?」
益田は殆ど恐怖と同様の感情にかられて関口を凝視めた。
この男は臆病な癖に時たま老獪といえるほどの智恵を覗かせる。益田の世界の言語をいとも簡便に掬う。うるさいと益田は吐き捨てて再度鞭を下ろした。関口は打たれた腕を見た。少し赤くなっているが、じきにひくだろう。
「愛してるとか言って欲しいわけですか関口さんは。あなたは自分でさえ嫌いなくせに? それは随分ご苦労なことですね。生憎ですが僕はあんたなんか好きじゃない。自分が愛してほしいからってそんな無駄な誓い、乞わないで欲しいな」
あなたとぼくの、ぼくだけの、あかるい前途を、じゃましないでくださいね。それはある意味ではやはり証になりうるものに関口は思えた。思えたけれど、強引に唇をふさがれて、それ以上何か言うことはかなわなかった。男よりは女のものに似ている白い指が、自分の肌をつうとなぞっていくのを関口は眺めていた。


にこりとわらう益田龍一はやはりどこかしら欠損して毀れたもののようだ。
益田は関口の上に乗った。くちびるを弓なりに笑ませて、足のつけねを関口のそこにぴたりとくっつける。「ン、ッ」
関口のそれが入口をかすると益田はよさそうにひくひくと体を痙攣させた。よだれが口の端からこぼれ垂れていく。益田龍一は、関口の乏しい肉体経験の中では飛びぬけて、いやらしいセックスをするにんげんだった。彼の透明な唾はとろりと関口の腹にまで落ちた。
「あアぁ、」
「―痛いか?」
関口は声をかけた。目端を赤く染めて潤む眸で益田が言う。充血した唇が鮮やかだった。
「ン、ぼく、痛いの、きもちい…、もっと、」
淫猥な応えに関口はひゅっと息を呑んだ。上体は起こした体勢の関口の肩に益田は腕をかける。
「もっと、奥まで、せきぐちさ―ア、ずっと…おく、ふかく、」
よろよろと骨張った肩が上下する。関口は益田のことばどおり彼の腰を下へと引き寄せた。ひうぅッと益田が嬌声をあげる。性器に伝わる温かさと、とろけた粘膜の感触に、関口も溜まらず呻きをこぼした。
「い、痛くして、いいから…、」
女みたいな黒髪が関口の頬や額を挑発するように触っている。益田は顔を伏せたまま中の関口の性器のさきを押しつぶすように腰を揺らした。
「―ッ、ますだ、くん、」
「もっともっと、ぼくのなか、突いて、押し拡(ひろ)げて…」
ね。
ぱっと上げられた顔は少し苦しげだが、酷く淫蕩な微笑を浮かべていた。融けていく、熱にあてられて関口はがむしゃらに自らの痩せた腰を動かし始めた。益田も眉を寄せて、淫らに喘ぎながらきゅぅと関口を締め付けた。白い指、黒い髪、赤いくちびる、

(かき回したらちゃんとぬいて)
(やさしく、とじてね)


ぜえはあという互いの荒れた呼吸と饐えたにおいが部屋に充満していた。もともと汗かきの関口の体からは大量の汗が滴っていた。
益田も額の上に手をあてて呼吸が落ち着くのを待った。別に関口が長いというわけでもないけれど、何だか彼とすると、毎度異様なぐらい濃密な興奮に呑まれてしまう。うつぶせの姿勢で益田は灰皿を引き寄せて、煙草を箱から取り出した。
「よくできました」
そう云いながら燐寸をすった。火をつけた煙草を早速大きく吸い込みながら、益田は関口にも箱を渡した。
「御褒美ですよ」
「何だそれは」
そう顔をしかめながら、関口は煙草を受け取った。益田は燐寸の棒も渡す。以前点けてあげようとしたら厭がられたのを思い出したからだった。
「だってはじめ関口さん怯えてたじゃないですかァ。こんな孔に入るかってぇ」
「僕が怯えたって泣いたって結局君は抱かせたんじゃないか」
「否定はしません、でももうだいぶ怖くなくなったでしょう。交換してみますか、つぎは」
交換と次と彼は一体どちらに突っ掛かるのだろうか?益田は関口の反応を愉しみに待つ。関口がはああと珍しく大声をあげたのは交換のくだりで何となく安心した。
「そっなっなっ」
「吃音症は治りませんかあ?関口さん」紫煙を吐く。
「こっ交換って」
「だから僕があなたに入れるんですよ」
「むっむっ無理だ!」
「そうでしょうとも」
さるのくせにかわいい。
そんなことを思いながら益田は起き上がる。下着も履かず台所まで言って、冷やしてあった缶ビールを取って来た。関口が栗鼠みたいな愚鈍な顔で益田を見上げた。煙草と同様、栓を開けて一口啜ってから、益田は関口さんもどうですかと勧めた。関口が頷いたから、その頭の上から缶の中身をぶちまけた。

頭がついていっていない関口に似合いますね可哀相で、と言ってやる。どうせ、布団は洗うつもりだったし、関口もこれから風呂に入るのだから、これは本当に特に意味もない嫌がらせと言えた。益田の頭は冷えている。特に関口を相手にするときは幇間を取り繕う必要もないので尚更だった。莫迦愚かなのはこの時ばかりは自分ではなく関口のように思えて益田は笑った。そうしたら関口も笑ったから驚いて笑いが引っ込んだ。ひとしきり笑ったあとで漸(ようよ)う関口が云う。
「…謎々の答えを怖がるなよ、益田くん」
濡れそぼつ。ビールの匂いに酔いそうだ。益田は煙草を再び吸い込むだけの時間を稼いでから返した。
「どうせみィんな知らなくて善いことばかりなんですから躊躇うのも道理というものじゃないですか」
その言葉は妙につっかからず舌に載った。


―土足じゃちょっと馴れ馴れし過ぎて、だけど素足じゃ物足りないから


関口を見送りに着いていった時には雨が降り出していた。別れの挨拶のあと関口は益田が貸した藍色の傘を持ってふらふらと歩いていった。その背中を益田は見るともなしに眺めていた。ねずみいろの空を見上げて益田は溜息をつく。(あなたは僕の人生を狂わせたのは榎木津さんや中禅寺さんだとばかり思っているみたいだけれど)
実際は降雨に感謝したい気持ちもあった。傘を返すという名目で、一度は会うことが出来ると思ったからだった。
(あいたい)
これは、あかしあの雨であるのだろうか。



121018


cocco暗黙情事

私の中でせきますはこんな感じなんですうぉぉ
書くのはんぱなく楽しくてうぇぇ
おわかりいただけただろうか益田の無限の可能性を
くっそドSビッチなんていい響きなのくそぉ
こういう心臓に悪い益田も凄く好きです

とりとめがない関益語りはこちら




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