骨まで冷えた海の色


こんな青益を誰が読みたいというのだろう本当にごめんなさい
学パロ優等生青木×不良益田まじでしゃれにならない変態
流血とか暴力とか自慰とかあり
あーる じゅうく





「んん―っ、ぁはっ、あはっ、は―」
彼の部屋で自慰をするのは最早習慣と言ってもいい。
優等生づらをしているくせに隠れて煙草を吸っていることも知っている。近づいたときにふと鼻をつくそれと同じ臭いが薄くこの部屋を支配していた。寝起きのままの布団にうつぶせに寝そべって枕に顔を押し付けた。においを嗅ぐ。男性用シャンプーのにおいがする。枕元に置かれた灰皿の中の吸い殻は後で回収しなければ。
「ふはああ―」
唾液が口の端から垂れてたまらない。だって、彼はつい数時間前までこの布団で寝ていたのだ。そして帰ってきて夜になればまたここに、ますだと同じように寝転がってねむるのだ。これで興奮しないほうがおかしい。
どことなく神経質なところがある彼の部屋は片付いている。せわしなく性器をしごきながらうっとりと妄想に耽る。
風呂上がりの彼。勉強に集中しているひたむきな眸。それが嫌そうに顰められる瞬間は益田をものすごく興奮させる。体育で汗だくになってサッカーをする彼。更衣室で見かけたひきしまった体躯。部屋には飾り気がなくて、ポスターの一枚も貼られていない。いやらしい本も、四回ほど探してみたけど見つからなかった。もしかしたらパソコンのエロサイトとかで済ませているんだろうか。これが済んだら確認しなければ。でもパスワードを設定されていたらどうしよう、用心深い彼のことだからあり得る。何か方法はないだろうか、彼に知られずこっそりとパスワードを手に入れる方法。彼が席にいないときにでも鞄をあさって手帳でも見てみようか。それにしてもあの人はどんな顔で自慰をするんだろう、オカズはなんだろう、巨乳だろうか、ぶっかけだろうか、それともSMだろうか、人妻か、もしやアナルファック? ああ頭がくらくらする。
「っはあぁ―きもひい、い…ふあ、あっ―ぁ…」
もう数時間もたたないうちに彼も帰ってくるだろうこの部屋でこんなことをしているなんて恥ずかしくていやらしくて汚らしくてたまらなかった。よだれが止まらない。静かな部屋に響くはしたない声がそのまま彼の清潔さを穢すようだ。恥ずかしい、気持ちいい、頭が煮立つ。鳥肌がたつ、
 バタンと音を立てて乱暴にとびらが開いた。
 我らが学級委員長がそこに立っていて、こちらを穢れたものを見るような目で見つめていた。
「――あのさあ、声、漏れてるんだけど」
冷たい声に胸がときめく。ああなんて良い顔だろう。出来るなら録画してオナネタにしたいものだ、彼が近づいてくる。
「変態」
だん、と強く、目の前の床に足が下ろされた。灰色のソックスに包まれた足、舐めたいなあ舐めたいなあ、だってきっと靴脱いだばっかりだから臭いんだろう?青木はそして、益田の視線を追って心底気持ち悪そうに足をひいた。
「どこ見てんだよ、死ねよ」
「あんたが殺してくれるなら僕ァ百回死んだって本望ですよ」
「――勃起しながら死にそうでキモい」
「それ、あり得ますね」
にこって益田は笑って見せた。ここはあくまでも友好的に。清く正しく美しい彼に勃起する益田は穢く間違いだらけの醜い人間のクズである。それらしいだろう、卑屈、なんだから。どうぞ蔑んで罵って殴って蹴ってあざけって下さい。めためたに犯してくれたって益田は大喜びだ、けれど多分それは高望みが過ぎるというものだろう。
「ゴミ漁ってたのきみ?」
「はい」
笑みを崩さぬまま益田は頷いた。飴の包み紙とか小さくなった消しゴムとか切った爪とかすごいお宝がいっぱいあった。
「…―服盗んだのも?」
「いや、新しいのは盗んでないですよ」
それは益田の嗜好に反する。がんっと強い音がして、少し遅れて頭に衝撃がきた。「っ――」息が止まる。
「しまえよ粗チン」
「――っ!」
 きれいなくちびるからそんな言葉が飛び出てきたのにますだは再び興奮した。と同時に腹を踏まれた。
「っげ、ほ―っ」
口に突っ込まれたのは黒い、
「――これさあ、父のなんだけど」
にこりと微笑んであおきが言う。サディスティックで、これ以上無いほど怒りを浮かべて、なんて綺麗な表情をするんだろう。あの目、ほしいな。
「きちんと弾も入ってるみたいだ、――!?」
益田は手をその顔に伸ばした。あの、眼球、欲しいなあと思って、だから、もしかしたら取れるかなと思った。
指先にどことなく濡れた感触がして、その途端銃身で頭を打たれた。脳みそが揺れた。
「っ、うっ、うわあああああっ!」
遠のく意識の中に青木の悲鳴が木霊して、どうにかしてその声を録ることはできないだろうかと益田龍一は考えていた。





 旧校舎の男子便所ははっきり言って臭い。でもとちらかといえば女子便所の方が臭いかもしれない。生理ナプキンでも放置されて腐ってるんだろうか。それは、嫌だな。コーヒーの缶に煙草を押し付けて益田龍一は思った。
体育祭は頼んでも居ないのに五月晴れで元々無かったやる気をさらに粉砕させるのに足る。人気の無い図書館で、きゃあきゃあと喧しい歓声を聞きながら弁当を独りもそもそと食うのにも嫌気がさして、彼は旧校舎の屋上の傍の階段で喫煙中だ。元々馬鹿の集まりみたいな共学校の風紀なんてクソも同じことで、さっき益田が使った男子便所は使用まっただ中であった。小便をしている間も構わずパンパンやっているのでムカついて、出がけに思い切り扉を蹴ってやった。「はあー…」紫煙を思い切り吐き出して益田はため息をつく。何で生きているんだろうかなんていうことはまあ時々疑問にも思うけれど、死ぬ予定もないから自分は適当に日々を過ごしている。
彼に食らった額の疵もだいぶ治ってきて、もう少しすれば包帯もとれるだろう。
正真正銘の拳銃を思い切り振りおろされて、ばああっと鮮血を迸らせて気を失った益田を目の前にあいつがどんなに焦ったのかと考えるだに面白い。
益田の両親は私立高を落ちたバカでおまけにゲイの息子にはとうの昔に何の関心も払わないことに決めているようだったから、益田は何を言われることもなかった。入院費は後でバイトで返せと言われただけだった。しかも退院翌日の朝食の席で新聞越しにだ。そこで傷つくほどのセンシティヴさは益田はとうに放棄済みなので特に何も思わない。益田が一人っ子なことが救いだというぐらいか。まあ龍一という名前をつけたぐらいだからもう一人は作る予定だったのかもしれない。しかしその予定は脆くも崩れ去ったわけだ。結婚なんていう愚を犯させたはた迷惑な愛情とともに。
でもあいつはお坊ちゃんだからなあ。その時に風が吹いて、買ってきたサンドウィッチなんかが入っているレジ袋を益田は片手で抑えた。きっと少年院とか覚悟したんじゃないのかな。
――益田は何も言わなかった。階段から落ちましたとか、後で医者に言った。信じたのかどうかは怪しいが、多分あいつの父が手回しでもしたんだろう、拳銃を持っていられるということは警察官か何かか。何度も忍び入った家の瀟洒な外観を益田は思い出していた。詳しく立ち入られることもなかった。益田は入院中、せっせと看護婦や女医との時間外勤務の妄想に勤しんだり、何年ぶんかのジャンプを一気に読んだりして過ごした。女は実際抱きたいとは思わないが(だってちんこがない)、妄想の中ならば別に何の支障もないのだ。おかしな性癖かもしれない、けれどおかしいとかそういう次元を自分はとっくの昔に逸している。
「あー…」
益田は身をそらして背を伸ばし、うろんな声を出して前髪をかきあげた。
あれ以来青木はあからさまに益田を避けている。益田は別にどうということもなかったので、体育の後の移動教室の時間をわざとふけて出しっぱなしの彼の使用済みのジャージの匂いを思いっきり嗅いでみたりとか、放課後に寂しく靴箱に放置された彼の上履きを履いてみたりとかしていた。あの綺麗な顔が綺麗にゆがむ瞬間が忘れられない。バレることをどこかで期待して股間を膨らませていた。妄想によりどこか現実から逃避し乖離する方法を益田は小さいときに会得していて、そうすればほとんどさびしくもむなしくもならないのだった。





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