「剣城くん、って言うんだね」
「は?…あんた…」

この前の。
その言葉を言わせる前に、最期の一枚だったタオルを押し付ける。
私の行動に驚いて持っていたドリンクを落とした剣城にザマアミロと心中したり顔を零して、「あ!ご、ごめんなさい!」と謝ってやる。
もちろんそんなのは表面上の話なわけだけど。
慌てて押し付けたタオルで濡れた足元を拭いてやると、「あ、」と剣城は小さく呟いた。
本当に、なんていうか…思い通りに引っかかってくれて随分と拍子抜けである。

「どうかしたんですか?」
「わ、どうしたの剣城それ…!!」

どうやらこちらで騒いでいたのに気づいたらしい葵ちゃんと天馬くんだ、そう声を上げてやってきた。
かくかくしかじかとうっかりして(もちろん嘘である)汚してしまったことを教えると、葵ちゃんはどうやら残っていたらしいタオルを剣城に渡し、「災難だったね」と笑顔で声をかけていた。

「本当にごめんね…」
「あ、いや…すみません。あの、どなたですか」
「…え」

どうやら本心からの言葉らしいそれに、開いた口が塞がらない。
この糞餓鬼、今何て言った?
私が誰かわからない、ですって…!?

「何言ってるんだよ剣城ー、昨日会ってるだろ―?」
「狩屋くんのお姉さんだよ!昨日、私たちのクラスまで案内したんでしょ?」
「…。あぁ…」

天馬くんと葵ちゃんの説明でやっと思い出したのか、こいつは少し大きくなった目を私に向けた。
と、どうやら私たちがワイワイやってるのを目敏く見つけたらしいマサキ(と信助くんと、初対面の薄紫髪の男の子)たちが何事かとこちらへ向かってきているのが見えた。

「すごいよね、帝光高校なんだって、狩屋のお姉さん!」
「いいなぁ、本当に制服可愛らしいですよね!」
「は…高校生!?」
「っ!?…そうなの、今年の春から高校生なのよ」
「…見えないですね」

恐らく無意識で発されたであろう剣城のその言葉は、なんの躊躇いもなく私の逆鱗に触れた。
ことが目視できるほど明確にわかった瞬間だった。
私が童顔だって、そう言いたいのかな、この糞餓鬼は…!!ふざけるのも大概にしなさいよ…!?

「ふふ…ふふふ…」
「!?え、あの…?」
「ふふ…覚悟してね、 剣 城 ク ン ?
「…!!」

皆からは見えない位置で顔を上げ、満面の笑みでそう呟いてやると、何かを感じ取ったらしい剣城は肩を震わせて驚いた目を私に向けていた。
ふふふ、永久ブラックリストに初記名よ、喜びなさい!
死ぬまで私を侮辱したことを後悔するがいいわ…!!











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