一緒にいよう の続きみたいなもの
「靴履きたくない」
「…お前なぁ」
なまえがそんな不思議な我が儘を言うのにももちろん理由があって。
といったって内容があまりにも抜けてるものだから苦笑しか返せないのが正直な話だけれど、彼女の尊厳のためにもなんとか笑いを堪えているところだ。
「やだ、履かない!!」
足痛いんだもん!!
俺の気づかいは、結局彼女のそんな言葉で全て吹き飛ぶことになってしまった。
ことの発端はそんなに遠い話でもなく、つい昨日のことである。
見栄でも張りたかったのか、慣れないヒールつきの靴で大学へ向かったなまえは俺の予想通り靴に惨敗して帰宅。足に数個の水ぶくれ(要するに靴擦れってやつ)を作って帰ってきたのだ。
女子大なんだから誰に見せる相手もいないくせに、なんてのは口にした途端拗ねられそうだから言わないが、本当にどうしてそんな思いをしてまでヒールを履きたかったのか甚だ疑問である。
しかし靴を履かないことには家を出ることもできないし、そうなると彼女は大学にも行けないわけだ。
最近は文●省サマが要らん法律を作って下さったそうで1つの授業は5回以上休めないらしく。こんなことで休んでいたら有事の時に困るのはなまえ自身だ。
「はぁ…」
仕方なしに腹を括って未だ文句を言い続けるなまえに「わかった」と声をかけてやると、驚いた様子で俺を見た。
「え、」
「どっちか選べよ。なんとか痛くないように処置して大学に行くか、俺にお姫様抱っこされて衆目に晒されながら大学に行くか」
「…え!?」
俺の提案を聞いた途端赤くなるなまえ。さあどうする?
「そ、そんなの無理だよ!」
「なんでだよ?俺には欠席に限度があるわけじゃないし、一日くらい休んだって痛くもないんだよ。だから、お前について行って一日中抱き締めながら移動したって問題はないわけだ」
「あう…あの、えっと…歩いて、行きます」
「よくできました。じゃあとりあえず足貸せ」
ソファに座ったなまえの足に絆創膏を貼っていってやる。これまた大量に作ったもんだな…
「こんなになるってわかってたんだろ?なんで態々そんな靴履いて行ったんだよ」
「そ、それは…その…」
おれの問いかけに言い淀むなまえに眉をひそめる。まさか浮気とか、じゃないよな…折角念願の同棲だってのに、そんなの悲しすぎる。
「言わなきゃ足裏擽るぞ」
「えっ!?い、言います言います!!…あの…笑わない?」
「笑わない笑わない」
「…その、ちょっとでも大人っぽく見えるかなあって…篤志くん、大人っぽいから、」
何をそんなに言い淀んでいるのかと思ったら、とんだ爆弾を投げ込まれてしまった。思わずしゃがみこんでいた足に顔を埋める。突然のことに驚いた彼女が大丈夫かと声を掛けてくるが返せる言葉は「煩い、ちょっと黙って」だけで。文句を言いた気な声を放っておいて、とにかくこの赤い顔が治まるのを待った。
あーもう、あんなこと言われたら行かせたくなくなっちまうだろ…ちくしょう
それは君だけの秘密の特権
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内申沢さんがここまでするのは彼女だけだよってお話。
南沢書こうとしたら左之さんみたいになる…2人ともエロ担当だからだ!!←(あらぬ言いがかり)
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