「たっだいま〜!!」

下の階からそんな上機嫌な声がして、直後ドタバタと階段を駆け上がる音がしたと思ったら今度は隣の部屋の扉が閉まった。バタンとすごい勢いで閉められたせいでこっちの部屋にまで震動が伝わってくる。
勉強の予習に専念していた俺はその音でふと顔を上げた。ついでにその音の発生源がいるであろう方向に顔を向けて一人でにため息を吐いた。正直、またかという思いが胸を占めている。

俺の隣には居候先の子供のなまえの部屋がある。父親方の親戚なので、所謂従姉妹というやつなのだが、俺となまえは全くこれっぽっちも似たところがない。
なまえは良く言えば天真爛漫でポジティブ、悪く言えば空気を読めない楽天家だ。おまけにテンション次第で言葉遣いや態度まで変わる現金な奴。
それがあのテンションで帰ってきたということは…どうなるかあまり考えたくない。

なんて考えてる間に横の部屋からはきゃーきゃー煩い奇声だのドタドタ煩い足音だのがひっきりなしに聞こえてくる。勉強に対する集中力も切れたことだし、とばっちりを食らう前に下の部屋に避難しておこう。
そう考えて部屋を出て、やることも見つからずとりあえずリビングに入ってテレビのリモコンを手に取った。まぁ見たいものがあるわけじゃないがやることもないので適当にチャンネルを変えてソファにドカリと腰を下ろす。上は相変わらずドタドタ煩いし奇声も聞こえてくるがそんなもん無視だ無視。そう決め込んで俺は神経をテレビに向けた。





2時間くらいして、ふと喉の渇きを覚えた俺は台所へ向かった。コップを取って冷蔵庫に入っていた水を入れ、飲もうと口へ近づける。
と同時に上からバタン!とまた音がしてドタドタとすごい速さで誰かが降りてくるのが聞こえた。誰かっつーか、なまえしかいねぇけど。そんなことを考えながらコップの水を口に含む。


「京介くん…っ!!」
「っ!?げほっ!」


そんな俺に、階段を駆け降りた勢いのままなまえが背中に衝突してきやがった。
もちろんいきなりのことにびっくりしてむせた。本当に空気を読めよお前は!
まぁそんなことが言えるわけもなく、俺は1つため息を吐いて後ろから抱きついてきたなまえの方へ向き直ってやった。当の本人は俺に顔を押し付けていて表情が全く見えない状態だ。


「おいなまえ、どうした」


端から見たら何事かと思うような体勢のこいつに声をかける。まぁ、大体こいつの通常運営はこんなかんじだからな。今さらどう接したらいいかとか考えるのもバカらしい。


「はわわわ…もう、もうみんなかわいいよー!かっけえよー!」
「っ、…おい」
「あぁもうなんなの読者を爆発させる気なのじゃあちょっと爆発してくるよ作者さんんんんん!!」
「おい…なまえ!」


力と衝動に任せてさらに抱きついてきたなまえを離すと、やっと少し落ち着いたのかなまえは今日帰ってから初めて俺と顔を合わせた。目が何時もより開いてる、ってことはまたマンガか本か買ってきたんだな。というか、


「なまえ、いつも言ってるように話で胸が一杯になったからって抱きつくな」
「だっ、もうさ、みんなが!!うわああぁぁぁ…」
「日本語を喋れ」
「みんなかわいいしかっこいいし好みすぎてどうしたらいいかわからん誰が嫁で誰が旦那!?」
「知るか」


いつもの調子でこっちのリズムが崩されてしまう。もう諦めたけどな…1つだけ譲れないものがあって、俺はなまえに顔を近づけた。
途端にびくっとしてなまえの動きが固まる。よく見ると頬に朱がさしている。そんなことお構いなしに、俺はなまえの顎を掬いとった。


「なぁなまえ」
「な、なに?京介、くん…」


狼狽えて目が泳いでたもんだから、触れるだけのキスをしてやった。直ぐに顔の赤みが増して、黒目が綺麗な瞳に俺が映りこむ。


「お前は誰の彼女だ?」


囁く様に耳元に唇を近づけて問うと、「京介くんの、です…」と消え入りそうな返答が聞こえた。それに満足した俺はなまえを抱え上げてさっきまで座っていたソファに寝転がした。手近にあったリモコンで電源を消すと部屋に静寂が訪れる。


「京介、くん?な、なにするの?」
「…聞きたいか?」
「う、え、あの、いや、えっと!」


しどろもどろなこいつを見てると笑えてきてしまう。別にそんな気はないが、さらに赤くなった顔と少し潤んだ瞳はそれを期待しているように見えた。
まぁ、それも悪くないかもしれないな。

嫌なら途中で止めろよと声をかけて、なまえの返事を聞く前に口を塞いでやった。



幻覚に嫉妬





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なにが書きたかったかわからないがとにかく愛だけは詰めた。
そして主人公の行動は管理人そっくりです←






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