「もう私たちの鳴くんに近づかないで」


もうどこの少女マンガだよってくらいベタベタのセオリー通りな勧告のしかた。体育館裏の人目につかない場所。私対、多数の他人。


「わかる?あんたのせいで、鳴くんいつも困ってんの」
「鳴くんにウザがられてるってわかってるわけ?」


鳴くん鳴くんとさっきから化粧の濃い香水臭い女どもが私に詰め寄る。なにようるさいな、この化粧しすぎの化け物どもめ。


「…なによその目。言いたいことでもあるわけ!?」
「………」
「はあ?だんまり?」
「はぁ…言っていいんですか?」


気だるげな目で顔を上げると、醜い女どもが視界に映った。そんなことを言うと思ってなかったのか、少し驚いたような顔をしてる。
まあこれからもっと驚いてもらうけど。


「まず第1に、私たちの鳴くんてなんですか。成宮はべつに物じゃないし誰かの物とか決められてるわけでもないですよね。妄想ってやつ?すっごい痛いですね。第2に成宮が困ってる?あんたら目どうなってんの?むしろキラッキラした目でたのしそうに彼から近づいて来てくれてるのがわかりません?あ、それはフィルターかかってて見えないのか。第3、今の理由から成宮が私をウザがってるっていうのはあなたがたの多大な妄想です。大体それ、成宮がいってたんですか?あなたがたにわざわざ言いに来た?それとも話してるのを聞いてしまった?違いますよね。いいかげんで確証もないことの為に私を呼び出すとか、」


ふざけんじゃねぇよ。


「嫉妬に狂っちゃった、ならまだわかります。でもこれって私みたいに成宮に近づけないあなたがたの被害妄想ですよね?ならこんな回りくどいことしてる間に成宮に少しでもアプローチしてきたらどうですか?って言うか、多対一って卑怯にもほどがあるし。少女マンガの読みすぎじゃないですか?もしくは1人でくる度胸がないだけ?」


言い切った。肺の中身も心の中身もスッキリだ。


「な…っ!う、うるさいわよ!!」


逆上したのかリーダー格らしい歳上の女が大振りに手を上げる。ここもセオリー通り。おいおいんなの簡単に避けれるよ?私がその体勢に入ろうとした瞬間。


「なにしてんのー?」


ある意味今回の元凶とも言える成宮が、体育館角から姿を現した。


「めっ鳴くん!!」
「なんでもないの!ただ、みょうじさんとお話ししてただけ、だよ!!」
「ふーん…じゃあその振り上げた手は?」


言われて思い出したのか、リーダー格の女は真っ赤な顔になって全員を引き連れて走って逃げていった。覚えてなさい!!なんて負け犬の遠吠えも忘れずに。


「……なんで来たの?」
「カルロが、なまえが大勢の女の子に呼ばれてったって教えてくれたの。なあ、なんで俺に言わなかったの?」
「………って、」
「……」

「だって成宮の彼女になるなら、これくらい1人でこなせなきゃなって思って。だから、成宮が来なくても大丈夫だっ」


結局私の言葉は最後まで声にならず空気中に消えていった。成宮に抱き締められたから。


「なんだよ、そのかわいい理由…」
「成宮?」
「なまえが俺と同じ気持ちで嬉しい。でも、今度からはちゃんと俺に教えて?」


離された体同士の隙間に風が吹き込む。成宮の体は安心するくらい温かかった。


「……うん」





頼る

(へへへ…でも嬉しいな!!なまえ、いっつも真顔でウザいとか煩いしか言わなかったから…)

(悪かったね無愛想で)

(いやいや俺はそんななまえに惚れたわけですから)

(煩い、鳴)

(…………あれ、名前!?)

(!!か、帰る!!)










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