「沢村でも風邪なんてひくんだね!!」
「でもって何だ!」


今日は珍しく授業中に寝てる沢村が教室にいなかったもんだから金丸に聞いたら熱があるとか。そんなん弄りにいくしかないじゃんと本来一般生立ち入り禁止の野球部寮にやってきたのがついさっき。行ってみたら本当に沢村が寝ててびっくりした。


「馬鹿は風邪ひかないって嘘なんだね」
「お前さっきから喧嘩うってんのかちくしょう!!」


布団の中でギャースカ騒ぐ沢村はいつも通りだけど心なしか顔が赤くてしんどそうな気がする。叫ばして悪かったなぁと思った私は、授業中抜け出して買いに行ったゼリーやらスポーツドリンクやらをその場に置いて立ち上がった。


「…どっか、行くのか?」
「ちょっと食堂行ってくるー」
「……あっそ」


なんか返事素っ気ないなぁと少し気にしながら私は食堂へ行って、あるものを持って帰ってきた。


「さっわーむらー」
「…」
「あり?寝てる?おーい、起きろー」
「ん…うぅ…」


何だよ…といらつきの混ざった声で目を開けた沢村に持っていたマグカップを渡す。中には奇妙に茶色がかった液体が入っていた。


「…これ何だ?」
「ん?梅生番茶」
「は?」
「と昆布茶ね」
「うめしょーばんちゃ?」
「そうそう」


まぁようするに梅干しと生姜湯とをお湯に突っ込んでちょっと醤油突っ込んだ風邪に効く飲み物だ。そのままだとくそまずいから昆布茶も入れて。


「んぉ、普通に美味い?」
「なんだハテナって。まぁ不味くはないと思うけど。妙薬は口に苦しって言うしさ」
「それを言うなら良薬だろ」


沢村にツッコまれてしまった。なんか不覚。グイッと一気に飲み干した沢村があ、なんか体暖かくなった気がすると言ったもんだから、取り敢えず寝るよう勧めてやった。


「寝て水飲んで汗かいて着替えてちゃんと栄養とったらすぐよくなるよ」
「ぉー…」


もう目が閉じてしまったから寝るつもりなんだろう。はやくよくなれよ、なんて心の内で呟きながら立ち上がろうと腰を浮かすと、クンとスカートが引っ張られた。


「寝るまでで、いいから…ここにいてくれ」
「へ?あ、あぁ、うん…」


妙に殊勝な沢村はいつもとのギャップで凄く可愛く見えてしまって、あぁどうしよう。風邪でもないのに顔が熱い。もしかしたらうつったのかな、なんて頭で自分に言い訳をした。



薬を処方

「もう寝た…」


あれからものの10分、沢村は見事に寝ついてしまった。のに、どうしよう。


「こんなに離れがたくなるなんて」


思いもしなかったよ。












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