もう今日で今年も終わり。今年もまた濃い一年だった。
野球部の地区大会準優勝、先輩たちの引退、秋大。そうでなくても野球部マネという一般の女子高生とは違う学生生活を送ってるのに、さらに濃い一年なんてもう疲れた疲れた!!


「まあでも今日終わったら新年だし!心機一転頑張りますか!!」


夜中には雪降るらしいし〜なんて考えつつ宿題のページを閉じる。そろそろお風呂呼ばれる頃合いだよなぁなんて考えてたら突然携帯が鳴り出した。バイブが長いところを考慮すると、着信らしい。


「こんな時間に誰だよーっと、はいもしもし?」
「おーなまえ?」
「すみませんなまえはちょっと用事で…」
「嘘つくんじゃねえよバカ」
「うっさい変態」


非常識な人だななんて思ってたら当たり前だった。だって変態だもんね!
あー画面みて誰かくらい確認しとくんだったよ。


「はっはっは、変態は大層な呼び方だな。でさ、今時間ある?」
「は?今?」

「なまえ〜」


今から風呂って言おうとしたらちょうどお母さんが呼んでくれた。ナイスタイミング母上!!


「いやー悪いね、今からちょーっと用事」
「何?」
「んー…生きていく上では欠かせない行動かな」
「何!?お前俺という彼氏が有りながら男か!?」
「なにがどうなったらそうなった」
「だって生きていく上で欠かせない行動っつったら…セックスだろ」
「バカはお前だバカ。風呂ですよ、お 風 呂」


ほんとこいつ変態バカだな、男と女じゃ性欲求の大きさは多大に違いが出るんだっつの。なんて思いながら言い放つと電話の向こうが急に静かになった。ん?…あぁ、


「…もしかして、想像した?」
「…」
「まじ変態」
「はっはっは、もう1ラウンド脳内で終了した」
「早」


こんなやつが彼氏で大丈夫か自分、なんて思わず自身で問い掛けてしまう。早すぎだろ。って言うか、


「用事ってなんだったの?」
「あー、今野球部で集まって騒いでっから、来たいんなら来る?って」
「あ、行く」


なんだよもっと早く教えてよなんて心の中で当たりながら取り敢えずお風呂に入る準備をしていく。


「行く、って今からか?」
「もち。あ、お風呂入ってからね」


当然の様に言い放つとまた電話越しに沈黙。何どうしたよ。


「やっぱ嘘、お前来んな」
「は!?なんで!?」
「なんでも!」


めずらしく御幸が声を荒らげたもんだから、余計に気になってしまう。


「なんで!?言わないと行くからな!?」
「なっ!?あーもう!!」


そんなもどかし気な声と共に、誰かに断りを入れてドアを開ける音が電話越しに小さなノイズとなって聞こえる。どうやら部屋を出たらしいと憶測したところでまた御幸の声が耳朶をうった。


「んなの決まってんだろ!!」
「わかんないから聞いてんじゃん!部屋出なきゃ言えないようなこと?」
「あーそうだよ恥ずかしくてな!!」


恥ずかしくて?一体何が言いたいんだか未だにさっぱりだ。




「…風呂上がりのお前を、他の奴に見せたくなかったんだよ」


悪かったな幼稚で。なんてまるで少女漫画の中の台詞みたいなことを言ってくれやがった御幸に、一発入れたい衝動に駈られる。理解した、理解はしたけど。こいつは、まったく…っ!!


「…お風呂、上がったら行くから」
「は!?おま、今の俺の告白聞いてた!?」


はあー、なんてたぶん空気中で結晶化して白くなってるだろうため息を溢す御幸。だってしょうがない。



会いたくなった。それじゃ駄目?


「…バカ」


電話越しでもわかる御幸の照れた声。今すぐにでも飛んで会いに行きたいよ。


「でも、やっぱ来んな」
「え、なんで」
「俺が会いに行ってやるって言ってんだよ、バーカ」


そんな御幸の言葉で、私の心はお風呂に入ってもないのに暖かくなった。





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年が変わろうともこいつらは変わらないって言いたかった






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