昔の二人を思い出した。総司が自らを労咳だと教えてくれた日のこと。もう二度と会わないでと突き放された夏の夜。
試衛館時代からの馴染みの私たちは一緒にいるだけで笑いの絶えない日々を過ごせた。二人してずっと一緒にいるなんて守れない約束を幼い頃交わしたことも懐かしい。

ずっと一緒なんて有り得ないのに。


目の前で眠る総司の痩けた頬に涙が滲む。少し触れた唇は冷たくなり始めていて、胸が痛んだ。結局私は総司から離れるなんてできなくて。気づけばこんな所まで一緒にいた。幼い頃の約束のように、ずっと。

「ん…名前…?」
「そうだよ。水、飲む?なにか欲しいものは?」

いつも通りに接しているつもりなのに目からは透明な水が零れ落ちていく。ああもう自分はダメな奴だ。最後くらい笑って見送るべきなのに。
私の質問を首を横に振って答えた総司は弱々しく私の着物の裾を掴んだ。

「ここに、いて」

昔のいつも人を食ったような笑みはここにはない。わかってた。いつか、こうなってしまうことくらい。


「ねぇ名前。僕、君のこと…好きだったんだよ」


「はは…なんで、過去形なのよ…」

その言葉が、声音が、優しすぎてとても痛い。鋭利な刃物で刺されたみたいな…。
私たちはあまりに近くにいすぎて互いの気持ちに気づかなかったんだ。それなのに最後にそれを告げるなんて、ずるい。悲しさと嬉しさ胸が一気に去来してどうしたらいいのかわからなくなる。あぁ、昔のように抱き締めてほしい。じゃれあっていたあの日々はキラキラ輝いて眩しくて、見ることができない。力の入らない総司の代わりに、私が総司を抱きしめた。少しでも長くこうしていたい。

「、名前…?」
「私も、好きだよ」

この想いを過去になんてしたくない。でも、総司の体はどんどん冷たくなっていく。総司が、死んでしまう。

「ねぇ、また喧嘩しようよ。またやきもち焼かせてよ。横、で、笑わせてよ。横で一緒になって、お昼寝…しよう、よっ」

私の悲痛な叫びに返ってくるのは総司の苦しげな呼吸と、苦笑。

「顔、見ることができなくなって、声聞くこともなくなって…っ私の中にだけ総司が生きてるなんて、耐えられないよ…っ」

総司にすがり付く。相対するように、力が抜けていく総司の体。
嫌だよ、残していかないで。

「……っ名前、ゲホッ…愛して、る…」
「総司!!、っ」

そっと唇に寄せられた指は、ただ当てられただけで私の動きの全てを止める。

「もう、僕の名前を、ゲホッ呼んじゃ、だめ。もう会えなく、なるし…息も、出来なく、なるけど…約束だよ」

昔みたいな不敵な笑みを私に向けて。ずっと、見守ってる。
そう言って、総司はいなくなってしまった。





うちつけたリベット



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Song by;奥華子さん
樹さん長らくお待たせしました!!
死ねたとのことでしたが、いかがでしたでしょうか?
お持ち帰り&書き直しは樹さまのみです。

樹さま、参加ありがとうございました!!






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