「はよー」
「ふぇっ!?あっ御幸くん!?」

びっくりしたー、おはよー。相変わらず眠そうに瞼を擦りながら律儀に挨拶を返してくれたのは、言わずもがな篠木だ。
なんだ、またほん読んで夜更かししたのかこいつ。懲りねぇなぁ、篠木も…。

「今度は何読んでたんだ?」
「え?あれ、私本読んでたこと話したっけ?」
「いや、話してねぇけど」
「うわ、御幸キメェ…」

俺の背後から突然声をかけてきたのは倉持で、お前いきなりその台詞は俺に対して失礼だろと思わなくもない。
つーか盗み聞きしてるなんてモッチーってば趣味ワリー!

「あでっ!おい何すんだ倉持」
「今無性にお前を殴らないと駄目な気がした」
「何でだよ。カルシウム不足か?」
「ちげぇよ」

そんな風に倉持と言い合い(倉持の場合は暴力だけど)をしていると、くすくすと楽しそうな笑い声が俺たちの耳を擽った。
発生源を見るとまぁ当たり前にそこには篠木がいて、心底おもしろいことがあったとでもいうかのように笑顔だった。

「ふふ、御幸くんと倉持くんは仲良しだね」
「「…」」
「え、あれ?どうしたの?」
「いや…倉持と仲良しとか…」
「それはこっちのセリフだっつの!!見ろよこの鳥肌!!」
「わ、大丈夫?今日ちょっと涼しいもんねー」

そうじゃない!
たぶん俺と倉持は同時に突っ込んだことだろう。
もちろん心の中でだけど。
やっぱりというか、なんというか、篠木は天然っぽいところがある気がするな。じゃなきゃあの返しがくる訳がない。

「あー、鳥肌治まんねぇ…」
「はっはっはっ…そんなに嫌か!」
「嫌に決まってんだろ!!」
「っと、今はそんなことにかまけてる暇はないんだった」
「おい今そんなことっつったか」

後ろでもっちーがなんか言ってるけど無視だ無視。
朝のホームルームまであと少ししかない。
俺は昨日から温め続けた疑問を篠木に問いかけた。

「篠木さ、昨日野球部のグラウンドに来なかったか?」
「ぅん?…あ、行った行った!帰り道の途中だったんだー」
「じゃあやっぱり…」
「?」

俺と篠木の会話から何の話をしているかわかったのだろう。倉持が文句を言うのをやめてこちらに意識を向けている。

「ヒャハッ!やっぱりあの強肩女お前かよ!」
「きょ…?」
「あー、遠くまでボールを投げられる奴ってこと」
「…?そんなに遠くなかったでしょ?」

篠木のそんな言葉に、俺と倉持は本日二度目の呆けた顔を晒してしまった。
こいつ…何者だ…?

「従兄弟のお兄ちゃんとよくキャッチボールしてた時とか、もっと遠かったよ?」
「「…従兄弟何者だよ」」

思わず倉持と声がハモっちまったが、そんなことは重要じゃなかった。
キャッチボールを従兄弟の、しかも男としてたって過去の事実に、モヤッとした俺の心臓の方が気になったのだ。
なんでこんな…と考え始めた瞬間に担任が来て、俺たちは渋々席につくしかなかった。

俺はこの謎について、暫く放置することにしたのだった。




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