10月に入ってまた席替えがあった。まあまた窓際の後ろの方だし倉持が前の席だしで今回の席替えはアタリだと思う。さっすが俺だよな「ゴンッ」…
ものすごく鈍い痛そうな音がして視線をすぐ横へ走らせると、俺の隣の席の女子が腕なんかでクッションをつくることもなく机に突っ伏していた。
っつーか、


「大丈夫か…?」


あまりに音が凄かったから思わず話しかけるとそいつはバッと顔を上げて俺を見た。おでこの辺りが赤くなっている。こいつ、減速せずに机に頭ぶつけた…?


「うおぁぁ。ってあれ、横の席御幸くんだったの?」


うわ見てなかったーと呟いたそいつは少し驚いた様子で俺に笑いかける。えーっとたしか、


「今すっごい痛そうな音聞こえたけど…大丈夫か?篠木」

「あーうん大丈夫ー」


へらへら笑いながらまた頭が傾いていってガンッとさっきより痛そうな音が俺の横の席でひびく。思わずひきつった笑いを浮かべてしまった。
おいおい音が全然大丈夫そうじゃねぇんだけど。


「夜更かしでもしてたのか?」


あまりに気になったのでそう聞けば「うん…」と気だるそうで眠たげな返答が返ってきた。


「本読んでたら気づいたら5時まわってて…」

「は、5時!?」


いったいどれだけ没頭したらそんな時間になるのか。思わず驚きの声をあげると篠木は机の中からスッと一冊の本を取り出した。つーか太!!


「……俺の見間違いじゃなかったらそれ10cmくらいあるように見えんだけど」

「うん、そんくらい幅あるとおもうなぁ。長編シリーズの最終巻なんだよー」


なんだその六法全書もビックリな厚み。もうそれ人殺せそうな幅あんだけど。そしてそれを読みすぎて寝不足になるこいつはバカかもしれない。


「ってことで私寝ますおやす…グー」

「あ、おい…ってもう寝てる…」


すーすー横から心地よさそうな寝息が聞こえてきて、肺の中の空気を一気に吐き出す。たしか次は爺さんな先生の授業だし、寝ていても大丈夫だろう。


「おもしろい奴が横にきたな」




これから1ヶ月、楽しめそうだ。




不思議な少女




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