お日さま園での騒動からはや一週間。さて、俺の近況を報告しようと思う。

まず部活。今のところなんの問題もない…と、思う。新技ができたわけでも新しいタクティクスを考えてるわけでもないけど、部員が喧嘩したとかチームワークに難があるとか、そんなことは全くない。
次に普通の学校生活、こちらも普通の日々だ。一回だけ抜き打ち小テストとかあったけどなんとかすり抜けたし、クラス内にも問題はない。

こんなに円満な日々を送ってるくせに、じゃあなんで近況報告なんてするのか。
それは偏にお日さま園内での生活の変化のせいである。










あの日俺が園に帰ってきてから、あの珠洲とかって猫はお日さま園に居座り始めやがった。
原因はお節介焼きな大人たち。
なんでもあのバカ猫が俺に助けを求めたように見えたらしいヒロトさんや晴也さんたちが(見えた、というか実際そうなのだが)、「そんなにマサキが好きならここにいたらいいよ」となんとも迷惑なことを言い出してくれたからである。
そしてその言葉を鵜呑みしやがった珠洲は、その日から俺が園にいる間は俺から一歩も離れることなく付きまとってくるようになった、というのが事の顛末だ。










「ねーねーマサキー、遊ぼうよー」
「…」
「マサキってばー!」
「…」
「無視するなー、マサキの馬鹿ー!!」
「誰が馬鹿だ!ふざけんな!!」
「マサキが無視するからだもん!」
「関係ないだろクソ猫!大体見てわかんないのかよ、俺は今勉強中なの!!終わるまでは絶対無理!!」


お聞きの通り、俺は只今絶賛勉強中である。そして勉強が終わったって相手をするつもりはない。なにが悲しくて猫女なんかの遊び相手にならなきゃいけないんだよ。こっちから願い下げだね!
そんな俺の気も知らず、俺の言葉を聞いた瞬間に珠洲の耳がピクリと反応して目が輝きだした。


「じゃあ、終わったら遊んでくれる!?」
「俺は一緒に遊ぶなんて言ってな」
「じゃあじゃあ、私がマサキに答え教えたらすぐ終わるよね!?そしたらマサキ、遊んでくれるんだよね!?」


こっちの話しなんて聞きもしない猫女はそう興奮ぎみに言い切ると、俺の膝に飛び乗ってきた。
端から見たら猫が俺にじゃれてるようにしか見えなくても、俺からしたら視界を塞がれたも同じだ。ノートも教科書も見れたもんじゃない。


「おいどけよバカ猫!ノートが見えないだろ!!」
「えっとね、ここの答えがー、」
「いらねぇよ!!だいたい宿題は自力でやりきるし、終わったってお前の相手をするつもりはない!!」


言い切ると「え…」と小さく呟いた珠洲が俺を振り向いた。ピンと張っていた耳は悄気かえって、目はどうして?と訴えかけてくる。よほど悲しかったのかどこか目が水分を含んで、光を反射して、そのビー玉みたいな黄色が綺麗だと思った。


「マサキ…遊んでくれないの…?」


擬音をつけるならシュン…とかしょぼん…とか、まさにそんな感じ。
…おかしいな俺、なんかこの猫女が、可愛く見える。…ような、気がする。
いや、気がするんじゃなくて気のせいだな。気の迷いってやつだ。
もしくはペットとして情がわいたか、そんなとこだろ。


「…っ、…わかった、遊んでやってもいいけど勉強の邪魔はするなよ。…終わったら少しくらい遊んでやる」
「!!やったあ!!」


だからこれはほだされたとかそんなんじゃなくて、ただ飼ってる猫をしつけてるだけ。
ただそれだけだ。


…よな?





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