ピチュチュピ ピ ピ…


障子から差し込む朝日が寝不足の目を焼く。さすがに完徹は死ねる。いやでもしょうがないよ考えなきゃいけないことがいっぱいだったんだよ!朝まで考えてやっと結論に達したんだから…!!


「……ん……」
「あ、起きたかな?」


上半身だけ起き上がって女の子の顔を覗きこむ。長い睫毛から綺麗な瞳が姿を現した。すごいよ綺麗な黒い瞳!!


「おはよーう!ちゃんと寝れた?」
「え……?あ、そっか…」


ぱしぱしと数回目を瞬かせて、女の子は我に返ったように飛び起きた。


「あ、あなたは、昨日の…っ」
「へ?あ、あぁ、うん。大丈夫だった?どこも怪我してない?」
「はいっあの、わ、私、雪村千鶴といいます。あなたは…?」
「私は文川澪。やっぱり女の子だったね、可愛い子で私も嬉しいよ」


にこりと微笑みを向けると千鶴ちゃんも少し照れたように微笑み返してくれた。ちょっこんな可愛い子だったら男の子でもバッチコイだよ!!やばいその顔超可愛いいぃ!!こっそりムッツリーニから借りたまんまのカメラでその笑顔を一枚撮る。これもう我が家の家宝…!!絶対誰にも売らない…!!!そんなことを考えていると部屋に一個しかない出入口が開いて人のよさそうなおじさんが姿を現した。


「ああ、目が覚めたかい?」


井上と名乗ったおじさんは、すまないね と苦笑しながら私たちをぐるぐる巻きにしている縄をほどこうとしてくれる。でもそれが弛んでるのに気づいて、驚いたような顔になった。


「あ、それ、鼠が来てかじっていったんです」


そう嘯くと井上さんは複雑そうな顔で納得してくれた。いや本当は昨日の夜召喚獣に切ってもらったんだけどね、説明面倒だしいっかなって。因みに私のは完璧にほどいちゃってます。端っこ握ってごまかしてるけどね!!


「そうだったのかい。それじゃ、2人ともちょっと来てくれるかい。今朝から幹部連中であんたたちについて話し合ってるんだが……」


そこで少し気まずそうに目線を外す井上さん。


「あんたたちが何を見たのか、確かめておきたいってことになってね」


何を見たのか?何の話だろ?あ、あれかな、撮影のことかな。
すると、千鶴ちゃんが声をあげた。


「……わかりました。…いいですか?文川さん…」


「もっちろん」


2人して立ち上がると、井上さんが明るく言葉を発した。


「心配しなくても大丈夫さ。なりは怖いが、気のいい奴らだよ」


人を安心させるような笑みで、私たちを先導し始めた井上さんが言った。














「私たち、何もみてません」


千鶴ちゃんの一言で少しだけ空気が軽くなった。場所は井上さんに連れられてやってきた、会議室?みたいなところ。私たちは男の人たちに監視されながら、質問を受けていた。
けど、千鶴ちゃん、そこはせめて自分の身だけ守っておいてほしかったな。永倉さんが真実を聞き出そうとするけど、千鶴ちゃんの口から吐き出されるのは 知りません の一点張り。


「あれ?総司の話では、お前らが隊士どもを助けてくれたって話だったが……」
「ち、違「そうですね、私が助けました」っ文川さん!?」


永倉さんの誘導尋問に引っ掛かった千鶴ちゃんの言葉を遮ると、千鶴ちゃんは驚きの声をあげた。


「私がたまたまこの子に話しかけた時に浪士たちがやってきたから応戦したんです。私の背に隠れていたから、この子は何も見てないと思います」


はっきりそう言いきれば尋問の対象は千鶴ちゃんから私へ移り、皆一様に深刻そうな顔になった。一部始終を見ていた私はともかく、千鶴ちゃんは 何も見てない わけだから少なくともその身の安全は確保されただろう。
このシーン、変えたかったんだよねー。だって千鶴ちゃんが新選組に置かれる理由かわいそすぎんだもん!!これくらいの改竄は大丈夫だよね!!
 で も 。この私の意図は千鶴ちゃんには通じなかったみたいで、明らかに動揺している姿が目に入った。あーあー、やっぱりあれかな、運命ってのは変えられないのかな。


「おまえ、根が素直なんだろうな。それ自体は悪いことじゃないんだろうが……」


原田さんは苦々しく、あいまいに言葉を切った。やばいかなあ。もう1つ、手を打とうか。


「だから!この子は、何も見てないんですってば!!この子は、私の弟は何も見てません!殺すのなら私だけで充分でしょう!!」


突然立ち上がって叫びだした私に驚いたのか皆が私を見て目を見張る。一番にそれを対象したのは土方さんで、私の首に一瞬で刀を押し当てた。








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