「大胆だなぁ、おまえさんら。捕囚の身分で俺らを呼びつけるか。…で、自分たちから声をかけてくるなんざ、そろそろ腹も決まったのか?」
呼んですぐに来てくれた永倉さんに促され、私はなんの気負いもなく口を開いた。
「そんなの、できるわけないじゃないですか」
さも当然という顔をして言い放てば、みんなして不思議そうな顔で私をみつめてくる。ちょ、やめてよーてれるじゃーん!!なーんて冗談はおいといて。
「ちょっとでいいんで私たちの話をきいてほしいんです」
「おそらく、お前たちの事情は汲めないだろう。それでいいなら、話せ」
私の懇願を冷ややかな声音で斎藤さんが突き放す。いやいや話くらいいいじゃんよ!!聞く耳持とうぜ!?
でもすぐに返答しなかったせいか、話はどんどん進んでいってしまった。いやいやちょっと待ってよ!
「おまえらの運の無さには同情する。ま、成仏してくれな」
「ほら、男なら諦めが肝心だろ?」
だからお前ら人の話聞けっての!
「さっき、【男なら】って言ってましたけど…事情も聞かないでハイさようなら、なんて、男子として恥ずかしいんじゃないですか?」
挑発する気たっぷりな目線で藤堂さんを見ながら言えば、彼は面白そうに目を細めて私を見返した。
「おまえさ、口の利き方に気をつけろよ。そっちこそ、男らしい態度取れば?俺らの事情を素直に受け入れればいいじゃん」
見事挑発に乗ってくれた藤堂さんに感謝。いやもう君単純だから扱いやすくて助かるよ!!
さて今から一発かましますか!!
「でも私たち、別に男じゃありませんから…あなた方の事情を汲む必要はありませんよね?」
自信満々に言い放つと、まるでその言葉の意味を吟味しているように間が開く。いや…長くね?
「もしかしてさ。……女、とか?」
「はい、もちろん」
………あ、本気で気づいてなかったんだ。
目を見開いて硬直してしまった藤堂さんと永倉さんに思わず涙がでそうになる。あぁ、もしかしたら気づいてての演技かもと一縷の望みをかけた私の時間を返してくれ。なんて私が過去の自分の行動に後悔していると、静かな声が耳にすんなり侵食してきた。
「ま、確かにそんな感じだな。身体の線が、女性的で柔らかいと言うか」
その声の主は原田さんで、平然と言ってのける原田さんに思わず感心してしまう。さすが新選組のエロ…じゃなかった、色男!!横で鯉みたく口をパクパクさせてる2人とは違うね!!
さてそのわからなかったうちの1人である永倉さんが女は袴なんてはかないからわからないのは仕方ないとか叫んでいるけど、私たちにそんなことは関係ない。今まで1人静かに事の成り行きを見ていた斎藤さんが口を開いたのに気づいて、私はとりあえず意識を斎藤さんにもっていった。
「おまえの言うとおり、せめて事情くらいは聞いてやるべきだろうな」
斎藤さんの鶴の一声を聞いて、私と千鶴ちゃんは嬉しげに目を見交わした。やったね!!やっぱり人間行動を起こしてみるもんだね!!
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