花たんお相手の難聴者のフリをした主人公
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「このクラスにはハンディを持った仲間がいる。皆、協力してやってくれ」

長くだるい始業式が終わり、クラスで初めて行われるLHRで担任が放った第一声は、その軽い声音と似つかわしくない、なかなかの内容だった。
もちろんその言葉にざわつかないわけがないクラスメイト共。
誰だ誰だとまるで敵を探すかのように、その異端子を摘発でんとキョロキョロ周りを見渡す奴らを、俺はまるで馬鹿を見る目で頬杖を突きながら眺めていた。
少しして、多くの目がこちらに向いていることに気づいた。
…いや、少し違う。視線は俺の向こうへ通りすぎている。
気づいた俺は無意識にチラリと後ろへ視線を向けていた。

そこにいたのは、黒髪の女だった。
まるでその存在を見せつけるかのように片側だけ髪を耳にかけている。
俺の方から見えたそこには、少し濁った透明な塊が見えた。
恐らく補聴器ってやつなんだろう。

「◯◯は難聴者で、幼いころにこの病気を患ったせいで話すこともできないそうだ。文字は読めるそうだから、コミュニケーションを取ってやってくれ」

教師から言い放たれた言葉に、馬鹿共が更に騒ぎ出す。
「えー、可哀想」だとか、「美人なのにもったいねえ」だとか、お前ら何様だよってな具合のささやき声がちらほらと聞こえてくる中。
そんな中、きっと俺だけだっただろう。
後ろから一つ、心底面倒そうなため息が洩れてきたのを聞いたのは。



さいしょはあれやこれやと構っていたクラスメイト共も、1・2ヶ月して興が削がれたのか。
7月に入ろうかという今となっては、◯◯という女に構う奴はいなくなっていた。
いじめではないそれは、無関心という放置だ。
それでもその女は、まるでそこに存在しないかのように扱われながら、それでも毅然と俺達の前を歩いていた。

「どーかしたのー?花たん」
「何でもねぇよ。つーか花たんって誰だ気色悪ぃ」
「えー?花たんは花たんっしょ」
「意味がわかんねえ」

クラスが変わって同じクラスになった原がやたらと構ってくる中、俺の視線は気づけば○○に向いていた。
別に運命だのが関係して恋しただのどうだのってなわけじゃない。
ただ俺は、4月に一度だけ聞いたあの溜息がやたらと頭に残っていた。

「花たーん、もう部活行く時間だろー?」
「あーはいはい、わぁってるよ。先行ってろ」

はーい、と軽い調子を残して原が教室から出て行くと、室内には俺と○○の二人しか残っていなかった。
俺も早く部活に行こうと中身を詰めた鞄を持ち上げクラスの外にでる。
その時、ふと聞き覚えのない、鈴のような声が俺の鼓膜を震わせた。

「あーぁ、ほんっと、世の中って馬鹿しかいないわよねえ…」




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この女の子対象に落とそうって気になる人って奇特ですよねえ…
花宮ぁ…

140205 02:50
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