そんな関係












「ウォーズさん」

「なんだい、ケビン」

呼ばれたので雑誌から顔をあげた。しかし彼は俺と目を合わせると、しどろもどろし始め 遂には「やっぱり何にもない」と顔を下げてしまった。鉄仮面越しのケビンの表情は『言いたいけど言い出せない』という感じか。彼がウンと小さい頃から成長を見てきたのだ、仮面越しに表情を読み取るなど容易い。

「ケビン、」

今度は此方から話し掛けてみた。ソファーに座る俺と、絨毯で胡座をかくケビン。此方に来て一緒に座れば良いのに、彼はその案に頷かなかった。理由は知っている。『意識してしまうから』。俺はケビンが"俺に恋心を抱いている事"も"俺を抱きたいと思っている事"も知っている。知っていて、何も行動を起こさない。いや、起こせないのだ。俺は 彼の父親であるロビンマスクの弟子。ケビンのセコンドも勤めたが、やはり関係は変わらないのだと思う。後ろめたさがあるのだ、今までの関係に。昔の様に「ウォーズさん」と呼び始めたケビンに嬉しさと共に、どこかもどかしさを感じた。それが、『彼が俺に好意を抱いている』と気付いたきっかけだ。

「………………」

今はあんなに黙り込んでいるのに、いつも俺に視線を注いでいる。彼の目で追われている。夜中だって、廊下に微かに漏れる声を、俺は知っている。知っていて動かない俺は本当に大人気ないのかもしれないな。けれど、怖いから仕方ないのだ。


"ケビンの愛が、欲しいのに"


もどかしいこの想いを自分のむねに隠しながら、俺はまた雑誌に視線を落とした。








  

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