snow snow.





真っ白い従兄弟が帰ってきた時、ブラックホールは ソファーで腕を組んでいた。


「遅ぇ」


一言そう言うと、「ごめんごめん…」と苦笑いで返ってきた。文字通り 急いで飛んで帰ってらしく、彼の背中の翼は 荒っぽく羽をしまう。玄関から彼が通ってきた後に 数枚の白い羽毛が落ちていた。


「……いい匂い するんだけど…」

「貴様が遅かったから、俺が作った」


勝手に使ったからな。と 冷蔵庫を指差すと、ペンタゴンはふにゃりと笑ったような気がした。いつまでも持っていたスーパーの袋をドサリ とテーブルに置くと、「やったぁ、ブラックのカレーだぁ!」と 子どもの様にはしゃぐ。やれやれと肩を落とし、ブラックホールは スーパーの袋を手に、先程まで苛立っていた事を忘れ、キッチンで鍋の蓋を開けてはしゃぐ 白い天使の元へ近寄った。





ブラックホールは 基本カレーしか作らない。唯一手料理として振る舞えるのが これだけなのだ。なので、いつもならば ペンタゴンが包丁を握っている。彼は手先が器用な為、この家の家事全般を受け持っていた。


「今日は、ジェロニモの特訓に付き合ってたら 遅くなっちゃってさ……」


ペンタゴンが急な用事で帰りが遅くなった時のみ、ブラックホールが夕飯を作る。カレーの作り方は基本的なものだが、彼は 細かいところに拘るのだ。


「今日は ルーを変えてみた。後、雑誌に載ってた……」


元々研究熱心なブラックホールは、今回は ペンタゴンも聞いたことのない香辛料を入れたらしい。皿に盛ってから、ペンタゴンは カレーの香りだけで ヨダレが止まらない。


「ブラック……、食べてもいいかい?」

「あぁ、たくさん食いやがれ」

「いっただきまーす」


元気よく手を合わせてそう言い、一口頬張ると 「うまっ!」と言い放つ。たかがカレーだろ?とブラックホールは苦笑いするが、内心 嬉しさで一杯だ。他人に喜んでもらえる喜び。


「(悪魔超人である自分にも こんな感情がある…)」

「ブラック、スプーンが止まっているぞ?なんなら 食ってやろうか?」


食い意地をはったペンタゴンがスプーンを伸ばすと、ブラックホールはぺちんっと その手を叩いた。


「行儀悪い」

「uhh…… sorry…」


母国語で謝るペンタゴンに、「まだたくさん残ってるから、そっちを食え」と促し、自分の皿に盛られたカレーを見つめた。キッチンでは ペンタゴンが ご飯を大盛りに盛って、その上にかけたルーを少しこぼしてしまい、大騒ぎしている。


「……まだまだガキだなぁ…」


ブラックホールは小さく笑い、部屋のカレーをスプーンで掬ったまま 部屋の窓を見た。レースのカーテン越しに見える夜空。今夜から雪が降るらしい。


その後、いつもより少し辛いカレーを ペンタゴンは三杯ペロリと平らげた。






  

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