抱き枕スペイン製









うっすらとした意識の中で、誰かが俺の部屋に入ってきたのに気付いた。布団の中は暖かくて心地好く、寒くなりだした今の時期は 朝起きるのが少しツラい。


(もう少し、寝たい……)


寝返りをうつと、背中の方から違和感がした。何かが モゾモゾと布団に入ってきた。寝惚けた頭を無理矢理起こし、侵入者の方を向くと。


「ゲ」

「あ、お早う バッファ」


軍冒を被っていないブロッケンが すぐ横で寝そべっていた。


「おいおい、何してんだよお前」

「何って、バッファを起こしに来たんだよ。でも、布団暖かくて出れねぇ」

「それ、起こしに来た意味無ぇじゃねぇか…」


へへへ、とブロッケンは笑う。一応着替えてきたらしく 軍服の襟元を少し開けていた。ハーゲンクロイツがキラリと光った。


「あったけぇー…」

「出れねぇよなぁ」


何をするでもなく、ただ布団の中で呟いた。


「そう言えばさ、バッファって 案外寝相 良いんだな。オレ最初、ベッドから落ちてると思って来たもん」

「ガハハ、そう言うお前は スゲー悪いもんな?」

「まぁなー」


恥ずかしがりもせず肯定したブロッケン。こいつの寝相の悪さは 正義超人内でも有名で、大会や合同練習で相部屋となった者逹の語り草となっている。ある時は ベッドから上半身を投げ出して"布団干し"のようにして平気で寝ていたり、又ある時は 雑魚寝していた複数の超人逹に無意識に寝技をかけていたとか。頭と足の位置が逆になっていることも日常茶飯事。


「こればっかりは、オレもお手上げだ」


自分の寝相の悪さにお手上げだなんて、ある意味スゴい。


「なんか、さ……」

「んー?」

「寝相とか 、寝る関係の話してたら…眠くなってきた……」

「あー、おい ブロッケン…」


目を閉じたブロッケンは、大きなアクビをした。そして、徐に俺の身体に腕をまわした。


「ハハハ、バッファって デカイ抱き枕みたいだなー」

「こんなんが売ってたら 誰も買わねぇっての」


「わかんねぇよ?オレは買うけどなー」


ブロッケンの"抱き枕 発言"に笑っていたが、いよいよ本気でうとうとし始めた奴は 俺の身体に顔を擦り付けてきた。

「おい、起きろよ」

「んー……」

「お前、俺を起こしに来たんだろ…」

返事がない、まるでしかばねのよう……。駄目だ、完全に眠っている。そして俺は動けない。

「勘弁してくれよー……」

手で顔を覆い、ため息をついた。このデカイお子様は、寝付きがものすごく良くて、変わりに滅多な事では起きないのだ。仕方なく起きようと上半身を起こそうとした。しかし、ブロッケンの腕が俺の身体を抑えて離さない。正直、簡単に引き剥がせるのだが、何故かこの時は 身動きがとれなかった。ブロッケンの寝顔を見つめながら、「あぁ、柔らかそうだ」と頬を突つく。身体に引っ付いているブロッケンの腕は剥がれぬまま、本当に俺を抱き枕にして眠りこけてしまったお子様。呆れながらも、起きるまでは この大きな身体を貸してやろう、そう思った。







  

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