ソルジャー誘拐事件





――拝啓 血盟軍諸君。早く助けに来てください!






「おい、決心はついたか?」

「後100万年は無理だな」

「その前に俺様がぶち犯すぞ」

「ぐ、グムー……」




ソルジャーことキン肉アタルは今、最大の危機に面していた。ブロッケン邸から出て、街を散歩していたときのこと。暖かな陽気にあてられ、暫し警戒心を緩めていたのが仇となった。突然背後から強い衝撃を受けて気を失い、気付いたら 今いる謎の部屋に監禁されていた。御丁寧に後ろ手で縛られている。これ位なら引きちぎれる、と思いっきり腕に力を入れたところ、何か強力な物で出来ているのか、縛られている縄はびくともしなかった。そして今、アタルの目の前に居るのは アタルを誘拐した犯人であろうスーパーフェニックスだ。

「ソルジャー、いや…アタルよ。俺様のモノになれ」

「……は?」

突然のプロポーズ的な発言に目を丸くするソルジャー。何故拘束されている自分が、拘束した張本人にそんなことを言われているのか。

「その前に、アタルって呼ぶな。呼んで良いのは身内だけだ」

「ほう、なら俺様も貴様の身内になってやろう。ポジションは勿論"旦那"だな」

コイツ、会話のキャッチボールが出来ないのか……。
ソルジャーは、グムム…と唸った。ソルジャーとフェニックスは、王位継承争いで一度拳を合わせた関係であるが、如何せんソルジャーの脳内でのフェニックスの評価はとても低い。様々な手荒い作戦やズル賢いフェニックスの性格のせいだろう。しかし、今目の前にいるフェニックスは、ソルジャーに好意を抱いている。

「フェニックスよ、」

「なんだソルジャー、やっと俺様の嫁になることを決めたのか?」

「そんなわけがない。何故お前は私を欲しがるのか、疑問に思ってね」

「なんだ、そんなことか」

そんなことかって、私には重大な事だぞ……。
ソルジャーの思いを他所に、フェニックスは話した。

「俺様がお前を気に入った理由などたくさんある!その何かを見つめて離さない真っ直ぐな瞳、全てを背中で語るような哀愁、ストイックに鍛えられた身体と 低く響く低音……」

「……………」

「そして何より、時たま見せる反抗的な目!俺様を睨み付けるその視線が堪らん、調教のしがいがありそうだ!」

「なっ……!」

最後の最後で飛んでもないことを言い出したフェニックス。口角を上げて、今にも襲いかかりそうなゲスい笑みを浮かべる。

「待て、フェニックス!早まるな!」

「言った筈だろう?あまりにも遅いと 俺様がぶち犯すぞ、と……」

「し、しかし……」

「フフフ…… 心配するな、俺様なしでは生きられなくだけだ」

「ヒィィッ!」

まさにフェニックスがソルジャーの顎を掴んだ瞬間。


ドッカーーーーン

「ん?」

「………!?」

部屋の外で突然大きな音が響いた。何かが壊れたような音。すると、部屋の扉の前が騒がしくなった。

『おい、本当に此処に居るのかよ』

『当たり前だ、拙者の偵察力を舐めるなよ』

『大体、この扉 鍵かかってんぞ。どうすんだよ?』

『カカカッ!そんなもの、貴様のロング・ホーンで一発だろう』

『あ、そうか』

『御主、何の為にそれを付けておるのだ……』

『バッファってたまにアホだよなぁ……』

『うるせぇやい!』

『カッカッカ!』


聞き覚えのある声達。フェニックスは額から汗が滲み、ソルジャーは安堵のため息をついた。


『ハリケーン・ミキサーー!』

ドッカーーーーン!!


先程よりも大きな音と共に、扉から一気に土煙が舞う。ボフンと舞ったその煙はフェニックスとソルジャーを襲った。

「ゴホッゴホッ、」

「ゲホッゴホッ、あー 最悪だ……」

フェニックスは肩を落とした。破壊された扉の前には、ソルジャーか指揮していた残虐チームの面々が立っていた。

「ほら見ろ、拙者のお陰だろう?」

「ふんっ、別にお前に礼なんて言わないんだからなっ」

「ブロッケン、今デレてる場合じゃないぞ……」

「お前ら、外にいた奴等はどうした……」

「カカカッ、外にいた奴等?誰もいなかったぞ?」

「何?」

「そうだ、俺らは鍵がかかった玄関と、此処の扉を破壊しただけだぜ?」

残虐チームの言葉にフェニックスが首をかしげていると、部屋の外がまた騒がしくなった。ドタドタと足音が聞こえ、粉砕した扉から入ってきたのは知性チームの面子である。

「フェニックス様!休憩にアイスでもと思って外に出ていたら、何が起こったのですか!」

「お前らが警備してなかったからだろうがあああああ!」




怒り狂ったフェニックスが。知性チームのメンバーを強烈な技で葬っている内に、残虐チームはソルジャーを連れてコッソリ逃げ帰ったのだった。






――――――後日談



「とりあえず、今後また拐われたら悪いので、何か案を出そう」

「拙者が四六時中見張る」

「駄目だ、お前には家事とかもしてもらわなきゃだからな」

「俺がずっとソルジャーと手を繋いで1日を共にする!」

「そんなの要らん!」

「なら仕方ない、私がこの腕を使ってソルジャーを何処にも行かないように捕まえていようか」ワキワキ

「やめろよ!それこそ危険だろ、ソルジャーの貞操が!」

「「「うーーん、」」」

「………私が気を付ければ良いだけの話なんだがな」









  

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